Squeezed choice

「みょうじさん、ちょっと」



朝のHRが終わるといつも私を遠目から見て笑っている人達が近付いて来てそう言った。今まで嫌がらせだったり悪口だったりはあったけど、直接呼び出されることなんてなかった。



『え…、』

「あれ、何か行けない理由でもある?」

「言い方キツイってー」



自分の席に座ったまま彼女達と向かい合っているため、必然的に見上げるかたちになってしまう。
私は何か彼女たちの怒りに触れるようなことをしてしまったのだろうか。もともとそんなに関わりのなかった人達からどうしてこんなに敵意を向けられなければいけないのかわからない。



『…行き、ます』



ゆっくりと立ち上がる。
クラスの人達が少しひそひそと何かを話しているけど、誰も私達を引き止める人は居なかった。…そりゃ、そうだよね。静かに落ち込む私の視界の隅で優里ちゃんが笑っていた気がした。
















もうすぐ、一限が始まるんじゃないのかな。こんな人数で抜けてしまって先生に何か言われたりしないだろうか。優里ちゃんの時と同じように人気のない所へ連れてこられると私を中心にして囲まれる。



「あのさ、あんたまだ付き合ってるんだって?」

『え?』

「優里の好きだったやつと付き合ってんの?」



少し睨みをきかせながらそう聞いてくる彼女に、また頭の中で考える。どう、しよう……ここは、なんて言えばいいのかな。なんて言えば、彼女達は許してくれるんだろう。
付き合ってると言えば、怒るだろうな………だけど、付き合ってないなんて嘘つきたくない。



『…つきあってる』

「やっぱりね」

「ってか、いつも教室来てるのがそうでしょ」

「誰?」

「確か、赤葦だったかな」



私を置いて、京治くんの話を始めた彼女達に冷や汗が出る。
どうしよう、どうしよう。京治くんに迷惑がかかったら、どうすれば…。



「よく付き合ってられるよね、優里いるのに」

『っ、』

「優里は優しいからなにも言わないけどさぁ、私らはそんなのないから」

『え………っ!』



ガっと胸ぐらを掴まれる、少し首が締まって口から声が漏れる。驚いて目を見開いて、私の制服を掴んでいる彼女を見ると彼女が笑っているのが見えて、すごく、怖くなる。



『っな、ん…』

「はっきり言うけど、目障りなんだよね」

『っ!』

「今までのやつで少しは傷ついたりすると思ってたんだけど、結構図太いからさぁ」

『……はなし、て』

「これからはもうまどろっこしいのは無し」



掴んでいた手がパっと離れて、うまくバランスが取れずに尻餅をついてしまう。
怖い、怖い、怖い。掴まれていたところを震える手でさすると目の前に立つ彼女が口を開いて言った言葉は、どこか聞き覚えがある言葉だった。



「別れてくれない?」



誰と、なんて言われなくてもわかる。
…私は、一体どうすればいいのかわからない。ここまできたら、もう。

座り込んだままの私を放置して去っていった彼女達の背中を見ながら膝を抱えて静かに泣いた。

  
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