The determination shaken

「えー!なまえまた赤葦と食べるの!?」



教室まで迎えに来てくれた京治くんと一緒にお昼ご飯を食べようと、弁当を手に持った所でそう言う声が聞こえてビクリと反応してしまう。…今日は一体なんだろう。



「また、ってそんな頻繁でもないと思うけど」

「そんなことないよ!なまえ赤葦とばっかり一緒に食べるんだもん!」

『え、』

「ねぇ、赤葦ー。今日はなまえのこと優里に譲ってよー」

「は?」



とうとう、こんなことまで。
今の私は一体どんな顔をしているのかな。恐怖で歪んでないかな。これからは京治くんとの時間も、こうやってじわじわと奪われて行くのだろうか。……嫌、だなぁ。



「ね!今日だけでいいから!」

「…なまえ」

『えっ?』

「今日は俺が譲ろうか?」



私の顔色を伺うように優しく聞いてくれる京治くんに、ハッとして今私が取るべき行動を考える。これ以上、優里ちゃんの怒りに触れないためには、どうすれば…。



『…じゃ、じゃあ、今日は優里ちゃんと、食べようかな』

「そっか」

「やった!流石なまえ!」



私に抱きついて喜ぶ彼女に貼り付けた笑みをみせると、京治くんは「じゃあ、また後で連絡するから」と教室を去っていく。置いていかないで欲しかったけど、この腕に縛られている間は無理だろう。



「……ちょっと、場所変えよっか」

『…うん』



京治くんに向けていた人懐っこい笑みを顔からさっと無くして私へと目を向けた彼女の視線は相変わらず冷たい。









場所を変えようと言い出した彼女に頷いて、彼女の後を追って来ると人通りが少ない踊り場へ連れてこられた。二人きりで会話をするのはあの時以来だからか、緊張で顔が強張る。今から、何を話すんだろう。それとも、何かされるのかな。ドクドクと速くなっていく胸の鼓動に嫌な汗が出てくる。



「ね、そろそろ考え始めた?」

『…え?』

「だからさぁ、赤葦と別れるってこと」

『っ、』



無表情というよりは、少し嫌な笑みを浮かべてそう言った彼女に鳥肌が立つ。…そうか、優里ちゃんは私に別れてほしいんだった。そのために、周りを巻き込んで、こんな…。



『わ、私、そんなこと…』

「んー、でもそろそろ辛くなってきたんじゃない?」

『なに、が』

「わかってるくせに」

『…あ』

「なまえってこういうの、じわじわ効いてくるでしょ。あんまり我慢強くないもんね?」

『っ、』

「辛くない?」



そんなの、辛いに決まってる。
地味な嫌がらせもこうも毎日続いてくると精神がおかしくなってしまいそうだ。どうすれば、これが終わるのか。どうすれば、普通の日々を送れるのか。そんな、ことばかり。



『っ誰の、せいだと…!』

「え、私何かしたっけ」



不思議そうにそう言う優里ちゃんに何も言い返せないのは、優里ちゃんが言ってることは本当だからだ。確かに優里ちゃんの一言によって虐めは始まったけど、優里ちゃん自身は何もしていない、から。
ぐっと唇を噛み締める私に優里ちゃんは笑って、人差し指を立てる。



「どうしたら楽になれるのか教えてあげる」

『え…?』

「ひとつだけ方法があるよ」



私に近付いて、はっきりと聞こえる声で彼女が言った。



「なまえ、赤葦と別れてよ」



簡単に予想が出来たその言葉に、私は動揺していた。

  
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