The help which can't be called

以前に、なくしてしまったと思っていたノートが何故か私の机の上に帰って来ていた。最初こそ喜んだものの、よく考えてみて少し違和感を感じる。もう新しいノートに書き出していたから別にいいんだけれど。ぱっと見失くなった時と何も変わりがないように見えるノートを手に取ってパラパラと中を見て絶句した。



『なに、これ』



落としそうになったノートをしっかりと握り直して、もう一度よく見てみるとノートにはデカデカと大きな字で私に対しての誹謗中傷が書いてあった。それも丁寧に全てのページに書いてある。今まで言葉の虐めしかなかったためか、これはかなりの衝撃を受ける。
ノートを握る手にぐっと力を入れて、ひとつ深呼吸をして落ち着く。…大丈夫、大丈夫、少し我慢するだけ。そう言い聞かせてそのノートを鞄の中に入れると、どこからか笑い声が聞こえたような気がした。






次の日になると、今度は机に入れておいた教科書が一冊なくなっていた。
ああ、これってこれから毎日続くのかな、なんてどこか客観的に思っていたけど、正直ノートは失くなってもどうにかなるけど、教科書は一つしかないから困った。
教室をぐるりと見回してみてニヤニヤと笑っている女の子達を見つける。多分…いや、絶対彼女達なんだろうけど、私には直接聞くなんて勇気はないから自分で見つけるしかない。
ドラマとかで見るとこういう時って大体ゴミ箱の中とかなんだよなって思い、教室の隅に置いてあるゴミ箱の蓋を開けると、本当に私の教科書が捨ててあって驚いた。中を確認してみると、今回は特に何もされていないみたいで安心した。ゴミ箱の上で教科書の汚れを落としてから自分の席に座って、なるべく平常心で居ようとした所で、誰が発したのかわからない声が私の耳に届く。



「…汚な」



はっきりとそう聞こえた言葉に、ぐっと唇を噛み締める。
…わたしが、何をしたっていうの。何もしていないし、悪くない。そう、思っていたのに、ここまで追い詰められると私が悪いんじゃないのか、私が何かしてしまったんじゃないのかという考えが浮かんでくる。
大丈夫、と何度も唱えた言葉も今じゃ全然何の意味も持たない。大丈夫なんかじゃない。こんなに辛いのに、大丈夫って言うだけでこの辛さが、胸の痛みが消えるわけじゃない。本当は誰かに縋って、助けを求めたい。大声で泣きたい。……でも、それが出来ないのは私が人に頼ることができないからだ。
もし、全てを話したとして、拒絶されたら?
そう思うと中々口を開くことができない。親であるお母さんにも、良くしてくれる先輩にも……京治くんにも。




『(…京治、くん)』




助けて、だなんて。
口に出せそうにもない言葉を頭で繰り返して耳を塞いだ。

  
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