I neither answer nor tell

「10分休憩ー!」



主将のその声に肩の力を少し抜く。
随分練習にも慣れてきた。入ったばかりの時と比べると、幾分か疲れもたまらなくなってきたと思う。



「よォ、あかーし!」

「………」



…なんでこの人こんなに息上がってないんだ。俺と同じ練習してたはず………やっぱりもう少し体力付けなきゃ駄目だな。



「これくらいで疲れるなんて赤葦もまだまだだな〜」

「木葉も息上がってんじゃん」

「うるせぇ!黙れ木兎!」

「…つか、なんで俺のとこに集まるんスか」



俺の両隣に座った先輩達にため息を吐きながらそう言うと「まぁまぁ」と返ってきた。この二人と話していると休憩中なのに休憩した気になれない。タオルで汗を拭いていると木葉さんが「そういえば」と話し始める。



「なんスか」

「赤葦いつ彼女紹介してくれんの?」

「…だからしないって言ったじゃないスか」

「あ〜、この前の!木葉が声掛けてた女子な!」

「可愛かったよなー。名前なんてーの?」

「教えません」

「つれねーなぁ」



いい加減しつこい。木兎さんはそうでもないけど、主に木葉さんが。何度断ってもこれだ。
眉間に皺を寄せてそんなことを考えていると、目の前に影が落ちる。



「ほら水分補給ー」

「あ、あざす」

「なになに、男三人で何の話?」

「赤葦の彼女の話〜」

「え!?赤葦彼女いるの!?」

「………」



普通にマネージャーに口を滑らす木兎さんを無言で睨むと、わざとらしく口笛を吹いて誤魔化そうとする。そんなのが効くと思ってんのかこの人。



「うわ〜気になる!どんな子?」

「めっちゃ可愛いんだよな〜赤葦」

「…マジで勘弁してくれませんか」

「えっ、赤葦照れてるの?」



珍しいと言って木兎さんと木葉さんと一緒になって俺を弄り始めるマネージャーに、本当になんとかしてくれと誰かに助けを求めても誰も助けてはくれないらしい。…小見さんなんか聞き耳立ててるし。
数分後の主将の声が掛かるまで、俺は黙って投げかけられる質問に耐えた。

  
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