I don't want to trouble

「――…」



昨日、あんなことがあったからだろうか夜よく眠ることが出来なかったせいで寝不足で頭がボーッとする。



「なまえ」

『…あ、なに?』

「大丈夫?ぼーっとしてる」

『ごめん、ちょっと考え事してた!』



心配そうに声を掛けてくれた京治くんに笑って返事をするけど、大丈夫かな笑顔引きつってなかったかな。
京治くんとのお昼ご飯。楽しみだったはずなのに、教室まで迎えに来てくれた京治くんに素直に喜べなかったのは、やっぱり昨日のことがあったからだ。
優里ちゃんからの突然の告白を受けて、それはそれは落ち込んだけど私はまだ優里ちゃんに嫌われてしまう事の重大さに気付いていなかった。高校に上がってからはずっと一緒だったから、優里ちゃんが離れてしまった今、私は一人で居ることが多くなった。男女共に人気のある優里ちゃんは既に中学同様私のクラスのリーダー的存在になっていた。
京治くんが教室へ来た時、私は優里ちゃんのことを見ることは出来なかったけど、多分彼女は私と京治くんを見ていた。



『!』

「本当に平気?」



弁当箱を見つめたまま動きを止めていると、頭の上に大きな手のひらが乗ってぽんぽんと撫でられる。ああ、このまま京治くんに全て話して、相談出来たらどれだけ楽だろうか。…でも、話の内容がアレなだけに京治くんには話すことが出来ない。
京治くんに心配かけないようにしなきゃ。



『全然大丈夫!それより今日先輩良かったの?』

「いいよ。なまえの事話したら付いてくるって言うからどうしようかと思ったけど」

『え、一緒に食べても良かったのに』

「俺が嫌だから」



あの人達となまえを会わせるの。
そう言ってくれた京治くんに嬉しく思うけど、あの先輩達と一緒にご飯を食べるのは何だか少し楽しそうだなぁとも思う。何より先輩と一緒に居る京治くんって何だか新鮮だ。先輩と話している時の京治くんは敬語を使っているけど、面倒臭いというのが顔に出てしまっていて少し面白い。



「…何笑ってるの」

『何でもなーい』

「黙ったり笑ったり、今日は忙しいね」

『京治くんはもっと笑ったほうがいいよ』

「いいよ、俺は」

『でも、京治くん笑ったらもっとモテちゃうからやっぱいい』

「なにそれ」



京治くんは、きっと自分がどれだけ魅力的なのかわかっていない。そうやって笑うだけで、どれだけの女の子の視線を集めているのかわかっていない。……だから、優里ちゃんの視線にも気付かなかったんだ。

  
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