【もげますね】


こんな、音駒は初めて見た。自分の書いていたスコアを見てみても信じられない。



「うーん、今日は調子が良かったか」

「ですね。まあ、それで片付けていい訳でもないですけど」

「また課題が増えるなぁ」



私の隣でそう話している監督達の声を聞きながら試合を観戦する。音駒が弱いわけではない。いつも通り、ボールはちゃんと拾っているし、スパイクだって決まっている……ただ、



「ヘイヘイヘーイ!赤葦ィ!」

「はい」



赤葦くんの上げた綺麗なトスを木兎先輩が凄い力で床に叩きつける。ダン!と響くその音に、試合前に研磨が言っていた言葉を思い出した。



『…あれは確かに腕がもげる』



ボソリと呟いてスコアを見直す。ただ点を取られっぱなしなわけではないし、隙を付けば勝てる可能性だってあるのかもしれない。…けど、その隙を少しも与えてくれない。監督とコーチも二人で話しながら試合を見ているけどタイムアウトはもう使ってしまった。

そして、試合終了のホイッスル。
両チームともまだまだやる気はあるようで、それを見た監督達も続けて試合を行う事を告げる。クロ先輩は当然といった顔をしていて、研磨は思い切り嫌そうに顔を歪めた。


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