【感謝感謝です】


じゃんけんで負けて購買に行くことになった。…こんなの提案しなければよかったんだ。実は結構前から研磨とお昼にやっていたんだけど、最近になってなかなか研磨にじゃんけんで勝てなくなってきていて、今日聞いてみたら私が出すパターンを考えて出しているらしい。…そんなの、研磨に叶うわけないよなぁ。



『ていうか、メロンパンて。普通焼きそばパンとかさぁ』



あ、そう言えば前に2年で話した時に虎くんが焼きそばパン好きだって言ってたなぁ。研磨はアップルパイで、招平くんはイカ?あたりめだっけ?
下を向きながら考えていると、誰かに肩がぶつかってしまって慌てて謝る。



『!ごめんなさ、』

「あれ、なまえちゃん?」

『…海先輩と夜久先輩?』



名前を呼ばれてから見たことある顔に気付く。先輩達も今から購買に行くのかな。



「なまえちゃんも昼飯買うの?」

『先輩方もですか』

「いや、持ってきたんだけど足りなくて」

「俺は付き添いかな」

『海先輩は優しいですね…それに比べて研磨は』

「なになに?研磨のパシリなの?」

『聞いてくださいよ夜久先輩ー』



さっきあったことを話すと、笑ってお疲れさまと言ってくれた先輩方に少しだけ癒された。そのまま先輩と一緒に購買へ行くと、まあまあ人がいた。メロンパンあるかな。



「何買うの?」

『メロンパンとクリームパンです』

「買ってきてあげるよ」

『え!?いいですよ!大丈夫です!』

「いいからいいから」

『あ、の、じゃあお金』

「奢ってあげるって」

「なまえちゃんにはお世話になってるから」

『そんな…!私のほうがお世話になってるのに…!』



必死に断ったけど、結局先輩に奢ってもらってしまった…。今度研磨と一緒に何かお返しをしなくては。あとは研磨のカフェオレだけだ。わたしも苺オレ買おうかな。そんなことを考えながら歩いていると、購買から少し離れた所の自動販売機に到着する。



「あ」

『……げ、』

「げって何だよ」

『何でもないです』



自販機の前にクロ先輩が立っていて絡まれる。うーん、前にもこんなことあったなぁ。



「両方食うの?」

『え?あ、いやメロンパンは研磨のです』

「は?研磨のパシリやってんのか?」

『…そーなりますね』

「へー」



そう言いながらクロ先輩は小銭を入れて、炭酸のジュースを買う。…クロ先輩が退いてくれないと買えない。



『…あの、』

「何買うんだよ」

『………いいです』

「はあ?」



さっきのこともあってか、クロ先輩が言おうとしていることが何となくわかった…から、クロ先輩が言う前に先に断りを入れると、クロ先輩は思い切り顔をしかめた。



「まだ何も言ってねーだろ」

『…あの、退いてくれるだけでいいので』

「前にもこんなのあったな」

『いや、あの』

「またココアか?」

『や、あのほんとに大丈夫なので…!』

「何遠慮してんだよ」



いや、確かに遠慮もありますけど、前回のでクロ先輩が奢ると言うのが裏がありそうで怖いんですよ。
それでも、退く気配のないクロ先輩と向き合う形になる。



「いーから、先輩に奢られとけって」

『クロ先輩は裏がありそうで怖いです』

「何言ってんだよ、ないって」

『その笑顔が怖いんですって!』

「んじゃ勝手に買うわ」

『は!え、あ、ちょっと待ってくださいよ!』



ガコン、と落ちてきたジュースをクロ先輩が取り出して私の目の前に突き出す。



「ほら」

『…なんで買っちゃうんですか』



しかもちゃんと苺オレって、エスパーか何かですか。



「結構無理矢理入れちまったけど、お前が入ってくれたおかげで助かった」

『え?』

「そのお礼」

『え、そんな』



大人しく苺オレを受け取るとクロ先輩は満足げに笑った。…わたしもバレー部入ってみて楽しいから、別にいいのになぁ。



「あと研磨のか?」

『え、なんでわかったんですか』

「だって研磨のパシリなんだろ?あいつ何飲むの」

『か、カフェオレ…』

「炭酸買っちまおうぜ」

『えっ』

「ほら、これ持ってけ」

『え、え、研磨怒りますって!』

「いいからいいから」


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