【凄いですね】
結局、第1セットは烏野に点が傾いた時にタイムアウトをとって、研磨の作戦でとりあえず翔陽の動きを止める事を優先にした。その役目に抜擢されたのは音駒で一番動きの速い走くんだった。大丈夫なんだろうかと、ドリンクを渡しながら頑張ってね、と声をかけると案外緊張した様子もなく、
「あざッス!頑張ります!」
と笑顔で返された。
その言葉の通り走くんは翔陽との差をじわじわと縮めて、翔陽の速さに追いつきスパイクを止めた所で第1セットが終わり、セットカウント1対0。とりあえずは音駒のリードだ。
『お疲れ様です!次も絶対取ってください!』
「おう、任せろ」
『研磨大丈夫!?ちゃんと水分とってる!?』
「とってるよ…」
呆れた顔を此方に向ける研磨の汗をタオルでぐいぐいと拭いてあげると、嫌そうに腕で退けられた。それにしても凄いな、烏野。翔陽とあの、研磨と同じポジションの9番くん。
そんな二人の凄い攻撃を目の前にしても、焦らずに点を取っていく音駒のみんなも凄い。
「犬岡、このままあのチビちゃんはお前に任した」
「はいッス!」
「っしゃ!俺もばんばん決める!」
『虎くんがんば!』
「おう!」
「じゃ、行くぞ」
クロ先輩からタオルを受け取って、みんなの背中を見送る。
「先輩!タオル貰いますよ!」
『え、いいよいいよ!優くん』
「いえ!先輩は記録やってくれているので、こっちは僕がやります!」
『あ、ありがとう…!』
笑顔でタオルを受け取る優くんにお礼を言ってから、試合に向き直ってノートを握る。
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