【眠いです】


5月2日。
とうとうやってきた遠征の日。私が試合に出るわけでもないのに昨日の夜からそわそわして眠れなかった。だから、少し寝不足なんだ。



「オイなまえ、真っ直ぐ歩け。置いてくぞ」

「なまえちゃん寝不足か?」

『やくせんぱい、昨日寝れなくて、ゲームしてました』

「研磨みてーだな」



そう言ったクロ先輩と夜久先輩は笑って「でも、研磨はちゃんと起きてるけど」と言った。…ほんとだ、元気だ、研磨。何か意外だな。朝弱そうなのに。



「なまえ大丈夫?」

『研磨げんきなのいがい〜』

「フラフラしないで、ちゃんと歩いて」

『わーかってる…』



霞む目をこすりながらなんとかついていくと、大きな手に腕をがっしりと掴まれて引っ張られる。足がもつれそうになりながらも何とか動かして、掴んでいる腕を辿っていくと私の顔を覗き込むクロ先輩がいた。



「寝るなら新幹線乗ってからだ」

『ハイ、すみません』



クロ先輩に引っ張られてなんとか新幹線に乗り込んで、自分の席に座ってすぐに寝る体制に入る。ちなみに私の隣はいないらしい。窓際に一人で座って、隣に部活で使う用具を置いておく。他の部員は何だか騒いでいるような気もするけど、今はそんなの構ってられないや。座ったまま目を瞑ると、何処からかパシャリという機会音が聞こえて重たい瞼を開いた。



『…なにやってるんですか』

「寝顔写メー。グループのやつに載せとくわ」

『イイ性格してますねクロ先輩』

「ほらほら、さっさと寝ろ」



自分で邪魔をしてきたくせに、私にさっさと寝ろと言った先輩はすぐに携帯をしまってしっかりと席に座った。ああ言いながらも、結局は載せることはしないんだろうな、なんて考えながら再び目を瞑った。




――――…




「なまえ、着いたよ」

『…ん、けんま』



ずっと寝ていたら、あっと言う間に宮城に着いてしまったみたいだ。ハッとして荷物を持って新幹線から降りると、みんなは何故か牛タン牛タンと騒いでいて何が何だかわからない。主に騒いでるのは虎くんと走くんだけだけど。



『え、今から牛タン食べるの?』

「知らない」



ゲームをしながらそう言った研磨の隣を歩いていると、前に居たクロ先輩に声をかけられた。



「歩きながらやるな。はぐれるぞ」

「ん、セーブしたらやめる」

「なまえは目覚めたか」

『あ、はい!ばっちりです!』



それからまた牛タン牛タンと騒いだけど、結局店がしまっていたのと、バスが来てしまったこともあり、虎くんと走くんは牛タンを食べれずに終わった。がっくりと肩を落とす二人にバスの中で飴を渡すと二人共喜んで食べていたから、大丈夫だと思う。



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