【盛り上がりました】
向かいの席から、じっと見られている。
勉強を始めてからずっと。いくらなんでも集中出来ないですよこれは…。そんなに見られると照れるんですけど…!せっかく教えてくれている赤葦くんの声も右から左だよ…!
『……あの木葉先輩』
「ん?」
『そ、んなに見られると…集中できない、といいますか…』
「え?そんな見てる?」
『…結構』
「いい加減にしてくださいよ…」
呆れたようにそう声を漏らす赤葦くんに、木葉先輩はストローから口を離して「えー」と言う。それから何か思いついたかのように「わかった!」と言って身を乗り出す。
「俺も教えるわ」
『えっ』
「二年の範囲なんて一通り終わってるから楽勝」
「普通そうですよね」
「お前木兎にも同じこと言えるのかよ」
「………」
『え、え、いいんですか?』
「勿論。任せろってことで赤葦席変わろうぜ」
「はあ」
そう言って席を立った赤葦くんが居た場所に今度は木葉先輩が座る。「よろしくねー、なまえちゃん」と語尾にハートが付きそうなテンションに、もう赤葦くんのあの落ち着いたテンションが恋しくなってくる。
『お、おねがいします』
「今どこやってんの?」
「そこのページですよ」
「うっわ、懐かしい!俺もこれ苦手だったわ!」
『!難しいですよねやっぱり!』
「難しい難しい。俺何回やっても頭の中に入ってこなかったもん」
『で、ですよね!?やっぱりここはもう諦めちゃって方がいいんですかね…』
「いや、でもここおさえとけば後は簡単なのじゃなかったっけ」
『え、そうですか?私あそこも苦手なんですけど』
「あそこ?」
『えっと…あ。このページです』
「あー!ここ!これ俺も苦手だったけど、意外と理解すればいける」
『本当ですか!え、じゃあこれはどうですか?』
「これ前使ってた式そのまんま使ってー」
「…すんません。そろそろ始めの式解きません?」
「『…あ』」
木葉先輩と苦手ポイントが丸かぶりで、話が盛り上がって始め解いていた問題からどんどんずれていくと向かいに座った赤葦くんが呆れたように話しかけてきた。…そうだ、まずはこれを解かなくちゃ。
「そんなんじゃいつまでたっても進まないよ」
『ご、ごめんなさい…』
「悪い悪い。じゃ、改めてやろっか」
『おねがいします!』
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