【バレました】
「よー、なまえちゃん」
『え、なんですか?』
「お勉強は進んでんの?」
『勿論ですよ!』
「へーぇ?」
『前に私を馬鹿にしたことを後悔させてやりますからね!』
「ふーん。そりゃ楽しみだ」
『…なんでそんなにニヤニヤしてるんですか怖いです』
下駄箱で偶然クロ先輩と会うと、クロ先輩はやけにニヤニヤとしながら私に近付いて話しかけてくる。なんだっていうんだ…。
「じゃ、せいぜい頑張れよ」
『?はあ』
ひらひらと手を振って歩いていく先輩を不思議に思いながら、赤葦くんとの待ち合わせを思い出して慌てて走った。
『あ、れ。今日は早いね?』
「ああ、何か木兎さんがあっさり諦めてくれ、て……」
待ち合わせ場所である喫茶店に入ると、いつも私よりあとに来る赤葦くんが既に座っていて珍しいと声を掛けると、自分も勉強していたらしい赤葦くんが視線を上にあげて私を見ると目を見開いて驚いている。どうしたのかと首を傾げると、赤葦くんは頭を抱えた。
『赤葦くん?』
「…みょうじ、後ろ」
『え、』
項垂れたまま私の後ろを指差してそう言った赤葦くんの指を追って振り返ると見覚えのある人が立っていて、思わず顔が引きつる。
「俺らも仲間にいーれーてー」
『え゛』
にこにこと笑って、私と赤葦くんが許可を出す前に勝手に四人がけのテーブルに座る特徴的な髪型をした先輩二人は、仲良くメニューを覗き込んで何を頼むのか相談している。……まって、これはどういうこと。
「…みょうじつけられてたんじゃない」
『え!?』
「とりあえず座りな」
赤葦くんに促されるまま彼の隣に腰を下ろすと、目の前に座った先輩が頬杖をつきながら私のほうを見てくる。……なんで私は気付かなかったんだ。え、学校からずっとってこと?
「まあまあ出来る、ねぇ」
『う…』
「何だっけ?俺を後悔させる、だっけ?」
『…ぐ、』
「で、どーよ赤葦クン。なまえの勉強の出来具合は」
「……今、やっとテスト範囲の半分を教えたところスかね」
『あ、赤葦くん…!』
「ごめん」
何という裏切り…!いや、先輩を連れてきた私が悪いんだけどさ!
へー、ふーん、ほー。とやたら大きな声で言いながら私をガン見してくる先輩の視線から逃れるようにノートで顔を隠す。
『…か、勘弁してください』
「え?何だって?俺何かした?」
「何?黒尾となまえは何してんの?」
「…木兎さん何で来ちゃったんスか」
「だってお前ら二人で飯食うなんてずりーじゃん」
「いや、俺ら別に飯を食いに来てるわけじゃないんスけど」
…結局この日は勉強なんて集中して出来るわけもなく、四人で少し食事をした後に解散となった。もちろん、家での自主勉強は欠かさなかった。
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