【おべんきょう】


結局、ノートは貸してくれたけど勉強は教えてはくれないらしい。めんどくさいってちょっと酷くないですか。……まぁ、普段から授業を真面目に聞いてない私が悪いんだけどさぁ。
…家でノート写してたら途中で飽きてゲーム始めそうだな。明日までに返すように言われてるし、何処かに寄って写していこうかな。駅の近くのマックでいいかなー。
帰り遅くなること言っておこう。集中してやればこんなの直ぐに終わるはず……集中してやれば。



店内に入って、適当に飲み物を買ってから空いている席を探すけど、中々見つからない。みんな学校帰りに寄っていくからかな。ぐるっと周りを見渡していると見知った顔を見つけてテーブルに近付く。



『あかあしくん!』

「え…?」



私が名前を呼ぶと驚いたように視線が此方に向けられる。私の顔を見て「みょうじ」と言う赤葦くんに笑って、同席してもいいかと聞くと少し悩みながら「いいよ」と自分の隣を開けてくれた。え、向かいの席はダメなのかな。



『…もしかして、誰かと待ち合わせとか?』

「え?違うよ…あ、隣嫌だった?」

『え!?いや、そういうわけじゃなくって…!』

「慌てすぎ」



私の反応を見て面白がっている赤葦くんに少し頬を膨らませると「取り敢えず座ったら」と、やっぱり赤葦くんの隣に誘導される。渋々とそこに腰を下ろした所で、どうして此処に座らされたのかやっとわかった。



「ん!?なんでなまえがいんの!?」

『……あ』

「こういうこと」



ポテトとハンバーガーを何個も載せたプレートを持って此方に歩いてくる特徴的な髪型をした先輩に、少し会釈をすると「なんでそっちに座ってんの?」と言われたから笑って誤魔化しておいた。なるほど。だから赤葦くんはこっちを勧めてきたのか。



「黒尾と孤爪と一緒じゃねーのな?」

『え、別にいつも一緒なわけじゃないですよ?』

「そうなのか?」

「てか、木兎さんまたそんなに買ってきて…」

「いーの!俺はこれくらいが丁度いいんだって!」

「…ならいいですけど」



溜息を吐いた赤葦くんを見て、お母さんみたいだなとストローに口を付けた所で本来の目的を思い出す。ガツガツとハンバーガーを食べ始めた木兎先輩とポテトをつまんでいる赤葦くんに申し訳なく思いながらも声を掛ける。



『あの、ちょっとノート広げてもいいですか?』

「?別にいいけど」

「勉強でもすんのか?」

『勉強……いや、ノートを写すだけなんですけど』

「ノート?学校休んでたの?」

『っぐ、』



違う、違うの赤葦くん。休んでたんじゃないの、授業にはちゃんと参加してたの。ただ、少しだけ寝ちゃってただけで…。
そんなことを思って少し気まずくなりながらも私のノートと研磨のノート2冊を取り出してテーブルに広げると二人は驚いたようにノートを覗き込んだ。そんなに見られると恥ずかしいんですけど。



「っぶ!真っ白じゃん!真っ白!」

「ちょっと、木兎さん汚いんで吹かないで下さい」

『……もう、笑ってくれても構いませんよ』

「何々、お前授業サボったりしてんの?」

『ちゃんとでてますよ!……ちょっと意識飛びますけど』

「寝てるんだ」

『うぐ…』



私のノートを見て笑う木兎先輩と赤葦くんに何とも言えない気持ちになる。…取り敢えず今は無視してノートを写すことに専念しよう。



「みょうじもしかして勉強苦手とか?」

『…もしかしなくてもそうですね』

「もしかして俺よりも、頭悪いんじゃねーの?」

「それは……どうでしょうね」

「何だよ赤葦!!」

「木兎さん、食べている時くらいは口を閉じててくれませんか」

『(赤葦くん容赦ないな)』



…っていうか、私どんだけ寝てたんだろう。大分ノート進んでる気がするんだけど、これテストほんとに大丈夫かな。テスト、やばかったら部活でクロ先輩に絶対馬鹿にされる。絶対だ。…どうしよう。



『…赤葦くんさぁ』

「なに?」

『勉強…出来たりするのかなーって』

「え。出来ない…こともないけど…」

『えっ、ほんと?』

「んく……赤葦は頭いーよなー」

「ちょっと、木兎さん」

『え、え、あの赤葦くん!』

「………」

『べ、勉強教えてくれませんか…!!』



隣にいる赤葦くんに、テーブルに手をつきながら頭を下げると向かいに座っている木兎さんに写真を撮られた。



『木兎先輩いいですか!!それクロ先輩に送ったら怒りますからね!!!』

「わかったわかった!木葉に送っておくな!」

『いや、わかってないですよね!?誰にも送らないでくださいよ!』



頭を上げて木兎先輩にそう言うと木兎先輩は「悪い、もう送っちまった!」と悪びれもなくそう言った。…ひ、酷すぎる。もう木葉先輩の顔見れない。



「…俺人に教えたこととかあんまりないけど」

『ぜんっぜん構いません!!』

「部活終わった後とかだと遅くなるんだけど…」

『時間は赤葦くんに合わせます…!』

「んー…」

『………』

「……わかった。いいよ」

『!?ほ、ほんと?』

「力になれないかもしれないけど」

『なっ、なれるよ…!ありがとう!』



何度も頭を下げる私に苦笑しながら「頭上げて」と言う赤葦くんは何処ぞのプリンくんと違って神様なのかもしれない。感動する私の耳にある機械音が聞こえてくる。



「あ、木葉が今から来るって」

『…帰ります』


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