今日は確かバレー部は練習試合があるとかないとか。こんな真夏日によくあんな暑い体育館の中でスポーツなんて出来るなーと思いながら足を運ぶと、どうやら休憩中らしくみんな床に座ったりして水分補給をしていた。
お目当ての黒髪の奴を探していると、よく目立つ研磨くんの隣でタオルを頭にかけて体育座りをしながら項垂れている黒尾を見付けた。タオルを頭にかけているからいつものツンツンした髪が抑えられてあまり目立たないけど、隣に研磨くんがいるからあれは黒尾だ。
走ってその背中目掛けて「どーん」と言いながら抱きつくと、何か違和感を感じる。

あれ、黒尾ってこんなに小さかったっけ。
黒尾ってこんなに細身だったっけ。
…なんで何も反応してこないの?



『え…』



恐る恐る顔を覗き込もうとすると、向こうも私の顔を見ようとしたのかバッチリと目が合う。…待って、この人、



『黒尾じゃない…』

「…えっと」

『っご、ごめんなさい!!!』

「え、いや…こちらこそ?」



慌ててその人から離れて頭を下げると、私から抱きついてしまったのにも関わらず頭を下げてくる。やばい、凄く恥ずかしい。どうりで頭ツンツンしてないわけだタオルくらいじゃあのツンツンは隠せないよねやっぱり。



「…何してんのお前」

『っ黒尾!!』



後ろからかかってきた声に振り返ると探していた人物が立っていて、呆れたように私を見る。立ち上がって正面から黒尾にぎゅうとしがみつく。



「悪い、赤葦。何かされた?」

「…後ろから抱きつかれました」

「馬鹿かお前は」

『ご、ごめんなひゃ…』



両頬を手で摘まれてぐにぐにと引っ張られる。痛い、けどこれは私が悪い。



「ちゃんと確認してからにしろよ」

『だ、だって研磨くんと一緒に居たから』

「え…俺のせいなの」

「ちゃんと赤葦には謝ったのか」

『あかあし、くん?…ごめんなさい…』

「え、いや…俺の方こそ何かすんません」



申し訳なさそうにする彼を見て、こんな間違いは二度としないようにしなければと心に決めた。


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