第10話
「石川最近モテすぎじゃね」
「は?」
秀の家、少しだけ訪れた沈黙を破ったのは秀だった。少しムスっとした顔でそう言った秀に、最初こそ眉間に皺を寄せた透だけど、すぐに自慢げな顔になって腕を組んだ。
「まあ、お前よりはなぁー」
「は、ちょっと、なんなの!!」
『まあ、事実だよね』
「なんなの二人して!!俺だってね、」
「え?なになに」
『秀の恋ばな!?』
「……あるわけないでしょ!!?」
部屋の隅っこに行って膝を抱えてしまった秀に、透と二人で顔を見合わせて笑う。 秀の言う通りで、透はきっと学年で1、2を争うくらいモテていると思う。ラブレターなんて私を通して渡す人がいるものだから、何故か私の顔も自然と広くなって友達が増えた気がする。透は告白されても付き合うことはしていない。何でも、今は部活頑張りたいだとか格好つけた事を言って断っているらしい。
「てか、今日は高校の話だろー…、なんで恋ばなだよ」
「お前が振ってきたんだろ」
『面接緊張しすぎて落ちそう…』
「「なまえならありえる」」
『うっさい!』
もうすぐ中学も卒業のため、今私達の学年では何処の高校に行くかで話は持ち切りだ。 特別頭がいい訳でもない私達は、家から近い片桐を受ける予定。片桐落ちちゃったらもう樫高しかない。…絶対受かってみんなで片桐行くんだ。
「てか、俺は面接よりも試験のほうだわ…」
「石川頭わりーもんなー」
「おい、ストレートすぎんだろ」
『秀もそこまで良くないくせにー』
「なまえもそこまでよくないくせに!」
「虚しくなるからやめよーぜ」
三人で溜息を吐いて、また話が途切れた。本当に受かるのかな、三人で。
「…俺さぁ」
『ん?』
「彼女とかって自然に出来ていくものだと思ってた」
「あ、その話まだ続くんだ」
何故かまた戻った会話の内容に、少しモヤモヤする。少し前から、透が誰かに告白される度、注目を浴びる度に何故かモヤモヤすることがある。友ちゃんに相談したときには、ニヤニヤしながら変な事を言ってきて、もっとモヤモヤするようになった。
「それって好きってことじゃね?」
『っえ!?』
思い返していた友人との会話と、全く同じセリフがすぐ近くから聞こえてきて驚くと、秀と透が不思議そうな顔でこちらを見ていた。
「なに、なまえ話聞いてたー?」
『え、あ、ごめん…聞いてなかった』
「そんなんじゃ面接落ちるぞー」
『面接関係ないでしょ!!』
…友ちゃんが変なことを言うから、変に意識しまっている自分が少し恥ずかしい。少しだけ熱くなった顔を手であおいで冷まそうとするけど、そんなに直ぐには冷めてくれなかった。
|