強タイム




『ねぇねぇ谷原なにしてんの?』

「………」

『おーい。谷原ー?』



隣から聞こえてくる彼女の声にだんだんイライラする俺。ちょ、まじで黙ってろって!



『谷原が無視するー』

「………」

『なにをそんなに難しい顔してるの』

「……っだぁあああ!?」

『うわ、どうしたの。いきなり叫んで』

「お前が話し掛けるからわかんなくなったんだよ!」

『え、なになに。勉強?』

「そうだよ…。テストあるだろ、今度」

『進藤くんは?』

「宮村で忙しいんだと」

『ふーん?』

「わかったら、ちょっと静かに…」

『ここ。間違えてる』

「っは!?」



彼女が指差す所を見ると、さっき解いたばかりの問題。…え、これ結構自信あったんだけど。



「嘘だろー…」

『シャーペン貸して』



素直にシャーペンを渡すと、彼女はサラサラと文字を書いた。こいつ頭良かったっけ?



『ほれ』

「うお、すげー…!」

『これこの間授業でやったばっか』

「え、まじ?」

『まじだよ』



ジュースを飲みながら話す彼女に、疑問符が浮かぶ。だってコイツは、授業中なんか寝てばっかで真面目に聞いているところを見たことがない。



「睡眠学習ってやつか…」

『ん?何か言った?』

「別に」



さてさて。自分の力でも頑張ってみるか。




×××




『ねー谷原ー』

「…(また始まった)」

『聞いてんの?』

「………」

『たーにーはーらー』

「………」

『………』



あ、黙った。諦めたか?
…怒ってたら後で謝ればいっか。



『……マキオ、』

「っは!?」

『っぷ!ただ名前呼んだだけじゃんかー!』

「おっまえ…!」

『マキオ。勉強教えてあげようか?』

「……っ」



名前を呼ばれただけで動揺してしまった自分が恥ずかしくて、返事をすることができなかった。





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