もっと、
※連載主
『ボリス、ファー頂戴?』
「だーめ」
『なんで!?なんでそれはダメなの…!』
「これは俺のアイデンティティだから」
『私もほしい!』
「だめー。俺のだからね」
ボリスからあれ取っちゃったらどうなるんだろう。いつもより、シュッとして見えるのかな?なくなってもかっこいいと思うんだけどなぁ。……そして、私が貰う。
「なに考えてるのさ」
『…それくれなきゃ別れるって言ったら?』
「えっ」
『考える?』
お、どうだどうだ。ちょっと気持ち揺らいじゃったりするのかな?じぃっとボリスを見てみるけど、俯いていて顔が良く見えな………あれ?
『…ぼ、ボリス?』
「アンタはさぁ」
『え?』
「俺と一緒にいんのイヤ?」
『……へ?』
「俺はアンタと一緒に居たいよ。ずっとさ」
『ちょ……ボリスくん?』
段々近付いてくるボリス。怖い、と言うより危ない。何がって私が。きっとアレだ。この猫さんは"別れる"ってとこしか聞いてなかったらしい。なんて事だ。
「なぁ…」
『…一緒に居るのがイヤ、なんて一言も』
「じゃあなんで別れんの?」
ほらね!やっぱりだよ!
ちゃんと私の話を聞きなさい!
『…別れないよ。逆にボリスはどうなの』
「は?」
『いっつも確認ばっかだよ。もっと私を信用しなさい!』
ボリスが思ってる以上に大好きなんだから!
そう叫ぶと、ボリスは一度目を真ん丸にして、その後に少し笑った。
「じゃあさ」
『なに?』
「俺が不安にならないように。アンタでいっぱいにしてよ」
ニヤリと笑いながら顔を近付けてくるボリスから、逃げることは出来なかった。