おはようの、
「おはよ」
『…ん、』
カーテンを開ける音に少し目を開けると、部屋に秀が来ていてもう朝なのかと嫌になる。見なかったことにして、布団の中に顔を埋めると秀が近付いてきて揺さぶる。
「ねえ、起きないと遅刻なんですけど」
『やだ…、』
「俺も遅刻嫌だから、早く起きて」
『あと十分だけ、だから』
「そう言って起きた試しがないよね!?」
必死に起こそうとしている秀だけど、どうしても自分ではこの居心地の良い布団から出ることはできない。なんでこんなに居心地がいいんだろう。時間稼ぎのために秀にわがままを言って困らせちゃおうかな。
『じゃあ、おんぶ』
「…ダメでしょそれは」
『じゃあ、抱っこ』
「…俺じゃ重くて持てないなあ!」
布団の中から腕だけを出して秀に伸ばして言った言葉に、まさかの答えが返ってきて一気に機嫌が悪くなる。ひどい、私そんなに太ってないし、そもそも秀私を持ち上げたことなんかないくせに。
『もう、やだ秀嫌い』
「え、嘘だよ、冗談だよ!」
『いや、きらい、おやすみ』
伸ばしていた腕を再度布団の中に入れて、秀に背を向けてしまうと後ろから焦って弁解する声が聞こえた。けど、知らない。もう、私を置いて学校に行ってしまえばいいんだ。不貞腐れて子供みたいな事を考えていると、黙っていた秀が話しかけてきたので少しだけ秀のほうに顔を向ける。
「…ほら、起こしてあげるから」
そう言って両腕を私の方へ伸ばして立つ秀に、さっきまで落ちていた気分が少し上がる。なんて単純なんだと自分でも思う。上半身を起こして、秀に腕を伸ばせば秀の腕は私の脇の下を通ってそのまま背中に回された。
『秀?』
「…ほんとに嘘だから」
『うん、わかった』
「ごめん」
『ゆるす』
秀の首筋に顔を埋めて笑えば、腕の力が強くなってぎゅってされる。
今度からはちゃんと起きてね、と言った秀に頑張ると言えば俺も起こすの頑張るねと言った。