『うわぁ……』



なんか、気付いたら服が泥だらけでした。ちょっとだけ血のにおいもする気がする。まぁ、時間がたてば綺麗になるんだけど……もしアリスに会ってしまったら怒られるのかな。



『お風呂、借りようかなぁ』



嫌だけど。あそこの屋敷に入るのが嫌だ!……けど、アリスのためだもの。仕方ない、よね。




☆☆




許可はとった。エリオットにとった。私はエリオットを信用してるよ!頼んだよエリオットお兄ちゃん!



『ふはー』



なんだか、アリスが来てからはよく入るようになったお風呂だけど、改めて見てみると広いよなぁ。私一人だったら余裕で泳げる。



『ふんふー♪』



なんか気分良くなってきて鼻歌を歌いながら湯舟に使っていると遠くのほうから話し声が聞こえて、耳をすませる。



「や、その…今は…」

「なぜ、私が入ってはいけない?」

「久しぶりだねー兄弟」

「さっきからヒヨコうさぎは何言ってるのさ」

「っうさぎじゃねぇっ!……っじゃなくて!ブラッド、あのよ……」

「お前はさっきから何が言いたい」



……コレは、まずいっすね。かなり。
はてさて、どうしたものか。今から出て行けば普通に会うことになりますね。でも、ここに居ても普通にあの人達入ってくるよね?なにそれ。かなりヤバいんじゃないの?っていうかエリオットしっかりしてまじで!困るよ!私は一体どうしたら…………あ?そーか、そうだよね。うん。




☆☆




「兄弟見てよ、これ!」

「僕のも見………?」

「?……どうかした?」

「"あれ"は?」

「"あれ"?」



ぴくり、と体が反応した。いやいやいや、焦る事はない。だってバレるはずがないもの。だって私は…、



「なんだろ、あの"茶色い固まり"」

「"毛の固まり"?」



ざぶざぶと近付いて来る気配に鼓動が速くなる。大丈夫、大丈夫。そう自分に言い聞かせる。やがて私に黒い影がおりる。



『っ』

「「…猫?」」

『に、にゃあ』



…そう。私は"猫"になっていた。この場をしのぐにはこの方法しかなかった。気付かなければいいんだけど、大丈夫かな…?



「…なんか聞いたことあるような」

「…声だね」

『っ!?』



うっわ!恐ろしい!無駄に鳴かないほうがいいな、コレ。っていうか、ブラッド達どうしたんだろ?



「ちぇ、僕らも行きたかったよねー。」

「うんうんー。せっかく殺す仕事なのに」

『………』



あぁ、成る程。なんていいタイミングなんだろう。



「……で?この猫」

「どうする?殺しちゃう?」

『にゃあ!(それは困る!)』

「……あ!思い出した!この声、なまえの、」



ダムがそう言いかけた時、誰かが入ってきた。ブラッド達は仕事ってことは、もしかしてアリス!?期待しながらそちらに目を向けると……、



「なぁ、お前らなまえ知らね?」

『っ!?』



思わず、叫びそうになるのを抑える。え?なんで普通にここのお風呂に入ってきたの君?



「あれ。ボリス」

「なんでここにいるのさ」

「だーかーら、なまえを探しに来たんだって」



ざぶざぶと音をたてながら近付いてくるボリスに冷や汗しか出ない。



「あ、ボリスはこの猫見たことある?」

「は?猫?」



私を抱き上げてボリスの目の前に持っていくディー。…あれ、ボリスに見られるの前にもあった気が……。



「………」

『………』



何してんの的な目でめっちゃ見られてる。やっぱり気付きますよねー!………助けて下さいボリスさん!



「…ちょっとコイツ貸してよ」

「知ってる猫?」

「あー…、まぁ、な」



ディーの腕からボリスの腕へと渡される。とりあえず、これで安心なのかな…?


『(っはー、危なかった…)』

「あ、そういえばその猫の声なまえの声にそっくりだったんだけど」

「っあー、気のせい気のせい!」

「……怪しい」



鋭いなぁ……。私は下手に鳴かないほうが良さそうだね。っていうか私、



『……どうやって出よう』

「っは!?」

「「っ!?」」

『…え?』



あれ。なんで私喋って……。
不思議に思っていると、ボリスがバッと私の前に出た。



「っちょ、ボリス邪魔!」

「やっぱりなまえだ!」

「っお前等ストップ!」

『は……え?』

「なまえは体隠す!」



そこで、やっと自分の体に起こったことを理解する。……素っ裸なんだけど。え、なんで勝手に戻った!?お風呂、お風呂がダメなの!?



『いやぁあああ!?』

「っ何で戻ってんの!?」

『ち、ちが…!勝手に戻ったの!』



私もびっくりなんだから…!
だってだって、お風呂では長くもたない(?) なんて知らない!聞いてない!
…っていうか、



『(み、見られ…見られた!?)』



ぎゅっと自分の体を抱きしめて肩までしっかりと湯舟につかり、ボリス達に背を向けた。



「ねぇ、なまえ」

『!』



後ろから声をかけられて、ビクリと肩が上がる。……振り向けないんだけど!声からして、ディー、だよね…。



『半径10m以内に入らないで下さい』

「何言ってるの?」

『今すっごい落ち込んでるからぁ…』

「そんな事よりさぁ…」



っていうか、ボリスは何やってるの。助けてくださいよー…。悶々と考えていると涙まで出てきてしまった。鼻をすすっていると私の前にディーが来て、私の涙を舐めた。



『…っ』

「僕らやっぱなまえが好きだ」

『え、ぉ…おぉ』



いや、なぜまた告白されてるの私。そりゃ"諦めない"とは言われたけども!…めちゃくちゃ照れるんですが!



「好き」

『……や、わかったから』

「諦めるとか無理」

『それも聞きましたぁ…!』



っていうか、無駄に顔近付けるのやめてくれるかなぁ!?子供の姿ならまだしも今大人だから!しかも私は自分の体隠すので精一杯だから!



「ねぇ…やっぱりさ、」

『?………うっわ!?』



ディーが真剣な声で話し掛けてきて顔を上げて聞いていたら、いきなり後ろから腕を引っ張られる。



「…いい加減にしろよ?」

『ボリス…、』

「…ッチ」



ボリスの顔を見て舌打ちしたディー。いつからそんなに仲悪くなったの…。っていうか、



『ぼ、ボリス離れて…!』

「ヤダ」

『っ私、ほんと裸だから!』

「そんな事知ってるっつーの」

『だったら、』

「放っといたら、あいつらに取られる」

『っえ゙』



なんでもっと警戒しないわけ?
そう言って呆れているボリスに、ごめんなさいと一言謝った。



「さーて、これからどうするかな」

『とりあえず、タオル欲しいです』

「…俺的にはこのままがいいんだけど、あいつらに見られるのはなぁ?」

「さっきから思い切り二人の世界なんだけど?」

「兄弟があと少し足止めしててくれれば…」

「兄弟こそ。抜け駆けはしないって言ったのに」



二人が少しの間言い合っている時も、私は胸がドキドキしていた(心臓はないんだけど)。だ、だっていくらなんでもこの状況はやめて欲しいというか…、ボリスに後ろから抱きしめられてるんだよ?死ぬの?私いま死ぬほど恥ずかしいよ!



「…なまえ」

『っは、はい!?』

「さっき、ディーになんかされた?」

『……されてない』

「嘘だろ」

『う、嘘じゃ…ないもん!』



じとりと見てくるボリスから視線を逸らす。今ここで言ったら私は何をされるのだろう。



「何?言えないようなことなの?」

『いや、だから別に何も…』



ぐいぐいと顔を寄せてくるボリスから逃げるように体を反らすと何故か尻尾に違和感。気付いた時には、ぎゅうっと尻尾を握られていた。



「痛ってぇ!?」

『にゃう!?』

「あれ?ボリスは痛がるんだ」

「〜っなにしてんだよ!」

『っありえないありえないありえない!』



私とボリスが叫ぶ中、何食わぬ顔で尻尾を握っていたのはディーだった。ディーは叫ぶボリスの尻尾を更にきつく握る。ボリスが痛い痛い言っていると、いきなり後ろに引っ張られる。



『っひゃ』

「なまえゲット」

『だ、ダム…!』

「さっきは兄弟と何したの?」

『へ?』

「僕も同じことすればイーブンでしょ」

『っは、はぁ!?』



一体何を言っているのかさっぱりだ。私がダムから離れようとすると、ダムはいい笑顔で私の尻尾を握る。



『にゃあっ!?』

「…何されたのか言えないなら、何してもいいよね?」



そう言い放つダムを前に、私は必死にボリスに助けを求めたけど、ボリスはボリスで大変そうだった。ちくしょう。



『何もされてないから!』

「絶対嘘。」

『っく、』



顔を舐められるくらい…!と、思ってしまう自分が怖い。どうしようどうしようどうしよう。頭がパニックだよ!しかも今体ほぼまる見えなんだよね、やだ、…もう、情けない。何もできない。



『…っう』

「………なまえ」



何故かまた涙が出て来て、必死にに手で擦っていたらその手をダムに捕まれて、あぁ、もうダメだと思っていた次の瞬間。何故か私は、ダムに抱きしめられていた。



「…泣かないでよ」

『っ、』

「何もしないから」



別に、ディーとダムが嫌いなわけじゃないけど、こういうのは、やっぱりボリスとじゃなきゃ…嫌だ。ディーもダムも優しい所だってあるけど、やっぱり私はボリスが好きだよ。



「っなまえ!」

『!…ボリ、』



どうやって解放されたのかボリスがダムから私を取り上げるようにして抱きしめると、そのまま脱衣所まで走った。
後ろからディーとダムが、わーわーと騒いでいる声が聞こえた。




☆☆




なんとか帽子屋屋敷から抜け出して、ボリスの隣を歩く。…いや、なんか気まずい。



『ぼ、ボリス、』

「当分外は出歩かせないから」

『っう…!』

「今回は俺が来たからよかったけど、俺が来てなかったら?」



ボリスに軽く睨まれて、私はまた泣きそうになった。



「…なまえ」

『っごめ、ん』

「……、」

『ぅ…ごめん、なさいっ』

「……俺の方こそゴメン、ちゃんと守れなかった」



ボリスが私の涙をペろりと舐めた。それから抱きしめられて、私もボリスの背中に腕をまわした。



「後であいつらに触られたとこ"消毒"な」

『………それだけはやめてください!』






初めてお風呂が怖いと感じた時


(軽い"お風呂恐怖症"だよ!)

(あいつらぶっ殺す!)








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大変遅くなりましたっ!
マユ=リラン様!リクエ
ストありがとうございま
した!(^ω^)
なんか、ボリス出番すく
…ない?しかも何故か切
ない所まで入りまして、
すみません!
結構長くなってしまった
んですが、最後まで読ん
で頂ければ光栄です!今
回は本当にありがとうご
ざいました!


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