「あのさ、遊園地とか行かねぇ?」
『「「「え?」」」』
×××
「うわぁ―――!遊園地なんていつぶりだろ!」
「みんな行けるとか奇跡だな」
『石川のおかげだねー』
只今みんなで、とある遊園地のゲート前。
どうしてここにいるかというと時はさかのぼって、2日前。
――…
「何よいきなり」
「遊園地なんて懐かしいよねー」
「いや、矢代さんがさ…」
石川の説明によると、お家のお手伝いさんが遊園地のペアチケットを5枚くれたらしく。みんなで行かないかということだった。
「うわぁ、金持ちって…」
「ユキ。ここは喜ぶ所よ」
『みんなで行けるの?』
メンバーは、
京ちゃん、宮村くん、ゆきちゃん、石川、れみちゃん、仙石くん、桜ちゃん、柳くん、井浦、私の10人だ。
いつ行くのか決めると、なんと10人全員行ける日があって。今に至る。
「なぁなぁ、何から乗る?」
「絶叫系。お化け屋敷とか?」
「即答かよ」
「じゃあ、京ちゃんだけ一人で行ってきなよ」
「何言ってるのよ。みんなで行くから楽しいんじゃない」
「柳くんとか河野さんは何がいい?」
「私は何でも」
「僕も何でもいいです」
『井浦とかジェットコースター好きそう』
「結構何でも好きだよー!」
「秀は何でもいけるよな」
最初に何に乗るのか全然決まらなくて、結局京ちゃんの提案でお化け屋敷に決まった。…せっかくの遊園地なんだから乗り物に乗ろうよ。
「ちょっと10人は多すぎるよね」
「じゃあ2人1組で」
「うーん、どうやって決める?」
『カップルさんは2人のがいいよね。京ちゃん、れみちゃん、ゆきちゃん』
「ちょ、ちょっとぉ!私は付き合ってないでしょ!」
「え?そうなの石川」
「秀…お前まだ言ってたのか」
「あぁ、もう。私が勝手に決めるわよ」
そう言って、京ちゃんは勝手にペアを言っていく。
一組目は京ちゃん、宮村くんペア
二組目はゆきちゃん、石川ペア
三組目はれみちゃん、仙石くんペア
四組目は桜ちゃん、柳くんペア
五組目は私と井浦ペア。
「堀さん絶対怖がらないでしょ」
「何言ってるのよ宮村ー。私だって怖がる時あるのよ」
「トオルよろしくねー!」
「おー」
「仙石くんは私が守るからね!」
「…た、頼んだ」
「柳くんよろしくね」
「よろしくお願いします!」
『井浦よろしくー!』
「よろしくー!」
さて、ペアも決まった所で、いよいよ中へ入っていきますよ。まずは京ちゃん宮村くんペアです。
「宮村くん…君のことは忘れない」
「ちょ、会長どういう意味」
京ちゃんはとても楽しそうに、宮村くんは少しだけびびりながらゆっくりと中へ中へと入っていく。
『次はゆきちゃん達だね!』
「うはー!緊張してきたー」
「ここ怖ぇのか?」
「でも、結構人気だよなここ」
そうこうしているうちに次の番がやってくる。
「こ、怖かったら手繋いでてあげるからね…!」
「あー、はいはい。手繋いでてやるよ」
二人は仲良く中へ入っていった。あれで付き合ってないとか言うんだから不思議でしょうがない。
「次の方ー」
「…お、お」
「仙石くん、大丈夫?」
「や、だ、大丈夫だ…!」
「だ、大丈夫だよ!れみが守ってあげるからね!」
次もゆっくりだが、中へ入って行った。あそこのペアは仙石くん倒れそうだな…。あと2ペア。
「僕こういうのあんまり得意じゃないんですけど…」
「私も!で、でも大丈夫…よね?」
「そ、そうですよね…!」
「あかねびびりすぎー!」
「う…、じゃ、行ってきます」
『頑張って!二人とも!』
柳くんと桜ちゃんも順調に奥へ奥へと進んでいった。残るは、私と井浦。
『そろそろ先頭は出てるよね?』
「そうだねー。…ところで、なまえはこういうの平気な人?」
『ぅえ!?…ちなみに井浦は?』
「え、俺?俺は全然平気ー。暗いのなら妹を夜トイレ連れてってるうちに慣れた!」
『わ、頼もしい!私は全然駄目だからよろしく…!』
二人で話していると呼ばれて入り口に立つ。やばい。もうこのおどろおどろしい感じが駄目。血の気が引いてく感じがする。
「よっし!行くかー!」
『ぉ、おー…』
二人一緒に歩き始める。…やっぱり怖いな。手、とか繋ぎたいな。でも井浦は嫌がるかもしれないし…。
「…あ」
『!…な、何!?』
少し前を歩いている井浦がいきなり立ち止まるから驚いて声を上げる。
「手とか繋がなくて大丈夫?」
『…え?』
「ほら。こういうの駄目って言ってたし」
『い、いいの?』
「全然いいよー。セクハラ扱いとかしなければ!」
『(セクハラ?)お、お願いします』
真っ暗な中でそっと井浦の手を握る。少しだけ、落ち着くな。
『井浦ありが〈ガシ!〉…がし?』
井浦と手を繋いでないほうの腕が何かに捕まれる……うん。嫌な予感しかしない。薄暗いなかで目を凝らして見る。それは紛れも無く、人の手、で……
『っ!?きゃあああ!?』
「え!?何!?」
『い、いう、人…手…!』
「お、落ち着いて!」
思い切り捕まれたほうの腕を振って井浦の腕にしがみつく。井浦もいきなり私が叫んだから驚いていた。
『ごめ…、い、いきなり腕捕まれ、て』
「ま、まじで?はやく出ようか!」
『う、うん』
井浦の腕に捕まったままだけど、まぁいいか。走って出よう。さっさと前に進もう。それから二人で出口まで走って行った。…何回かお化けが追いかけてきて失神しそうになったけど。
「つ、着いた…!」
『や、やっと…!』
勢いよく外へ出るとそこには皆が居て、何故かこちらを見ながらにやにやしていた。
『?……あ、』
「あ、」
「あら?いつのまにそんなに仲良くなったのかしら?」
『っい、いや!これは私が…!』
「そ、そうそう!怖がってたから井浦が掴んでていいよって言ったんだよ!」
「やだ、井浦変態」
「なんでそうなるの吉川さん!」
真っ赤になる私達を見て、みんなはますますにやにやしていた。
→後編へ続く…!