「暇!」
その一言に誰ひとり反応することはなかった。
「ちょっと!聞いてよ!」
「ごめんな秀。俺は暇じゃねぇんだ」
「携帯弄ってるだけだろ!」
「井浦くんもう少し静かにしたらどうだ」
「仙石さんまで!ねぇ、なまえも暇だよね!」
『ちょっと、私を巻き込まないで』
「幼なじみに冷たすぎる!」
一人でぎゃあぎゃあ騒いでる秀を誰ひとり構おうとはしなかった。だって、どうせあれでしょ?なんかしょーもない遊びとかするんでしょ?
「…で、今回はなんだよ」
「かくれんぼ!」
「おい。それ前もやってなかったか?」
「前とはメンバーが違うよ」
「あぁ、この前はなまえとか居なかったもんな」
『え?かくれんぼ二回目なの?』
「この前は柳くんとかいたよねー」
『へ、へぇ…。で、今回のメンバーは』
「俺!石川、仙石さん、宮村、あかね、堀さん、吉川さん、なまえ」
「前とそんな変わってねぇ…」
顔を引き攣らせながら言う石川を無視して、秀はどんどん話を進めていく。本当にやるんだ
「じゃんけんしようぜ!」
「…これ。参加しないと駄目なの?」
「ごめん、堀。相手してやってくれ」
『ごめんね、堀さん…。』
「はぁ…。まぁいいけど。前はすぐ見つかっちゃったしなぁ」
「柳くん何気に凄いよね」
「あ、あれは色んな方の協力があったので」
「俺は見つかんなかったけど!」
「お前もうあの技禁止な」
「えぇー」
前回やった時の話を聞いて、少し寂しく思った。私もやりたかったなぁ、なんて。まぁ、今からやるんだから別にいいけどね!
「じゃあ、せーので」
「じゃーんけーん…ぽん!」
×××
『こんなのってないよ…!』
「どんまいなまえ」
「じゃあ今から100秒なー!」
「堀どこに隠れる?」
「そうねぇ…。ユキは前と一緒?」
「んー。そうしよっかな」
「柳くんどこにする?」
「どこにしましょう…」
「あそこは前すぐ見つかった場所だしなぁ」
「あそこで大丈夫だと思いますよ、仙石くん」
…これ、絶対に隠れる側のが楽しいよね!?私一人でここに立って100まで数えるなんて悲しすぎる!
「…よーい、スタート!」
『………いーち、にーい、さーん、』
私の声でみんなが走って隠れはじめる。私はとりあえず、ゆっくり数えようと、その場に座った。…100秒って長いなぁ。
『…ごーじゅー』
「なにやってんだ?」
座って数えていたら、突然上から声が聞こえて、顔をあげる。
『あ、安田せんせー』
「こんなとこ座ってっと制服汚れるぞー」
『大丈夫ですよー。………あれ、』
「どうした」
『私、何まで数えたっけ』
「…数?」
『あぁー!ちょっと、せんせーのせいだよ!』
「なんで!」
自分で忘れたのが悪いんだけど、先生を責める。すると、先生はまだ仕事があるからと行ってしまった…私にいい情報をくれてから。
『忘れたから、もう100秒たったって事で!』
私は立ち上がって捜しはじめた。
×××
『ふんふんふー』
さてさて、誰から見つけてやろうか。
そう考えながら適当に歩いているとあの教室にたどり着いた。目的の場所まで歩いて、ガタっと扉を開ける。
『吉川さんみーっけ!』
「うわ!びっくりした!」
『えへへー。一人目げっと!』
「えぇ!私一人目!?」
まずは吉川さんを見つけた。次は、えっと…うん。あそこかな。
×××
『あれぇ。生徒会室誰もいないのかなぁ』
「ほんとだぁ。もう鍵掛けてもいいよねぇ、桜」
「そうね。仙石くんもいないみたいだし」
「…っだぁあああ!!いるいる!まだいるぞ!」
『はい、仙石くんみーっけ!』
「っく…!」
生徒会室まで行くと、れみちゃんと桜ちゃんがいて協力してもらったら、すぐに仙石くんが出て来てくれた。
『えっと、あと五人…かな』
×××
あてもなく廊下を歩いていると、外から声が聞こえてくる。
「うー、さむ…」
『あらら。寒い中ご苦労様ー』
「やっぱりまだ寒いよー………って」
『ふふ。宮村くんみっけ!』
「あちゃー。見つかっちゃったかー」
『あとは、石川と秀と柳くんと堀さんだ』
「やった。俺が最初じゃなかった」
『んー。』
「…あ、そういえば」
『うん?』
×××
『えぇっと』
「………」
『や、柳くーん』
「………」
ね、寝ていらっしゃる…!
これは起きそうにない、な。寝かしておこうかなぁ。…風の噂で寝起き悪いって聞いたことあるし。
『…柳くんみぃーっけ』
とりあえず、柳くんに向かってそう言ってその場を立ち去る。後でメールしておこう
×××
『えぇっと、あとはありきたりな所しか…』
すたすたと歩いて、ある教室へと向かう。
『(物理室の、使われてない足許の…収納スペース)』
ガラガラ!
「!」
『まぁ、あれかなぁー?こんなありきたりな所に隠れるのは石川くらいかなぁ?』
ゆっくり、ゆっくり近付いて、カラ、と開けると目に入ったのは鮮やかな紫色。私はソレに、にっこり笑って
『石川みーっけ』
「っだぁあああ!!やっぱやめときゃよかった!」
『普通こんなわかりやすいとこ隠れないよ』
「…俺何人目?」
『五人目ー』
「よっしゃ。あと誰?」
『堀さんと秀!』
「あぁ、秀…」
あいつまだ見付かってないんだ、そう言う石川を見て、絶対見付けてやると闘志を燃やした。
『堀さんは…、』
×××
「もう!どうして、なまえも柳くんもここがわかるのよ!」
『あ、はは…』
うん。とりあえず早く出よう。直ちにここを出よう。
あとは秀だ!
×××
『っ、は!?』
見付からない見付からない見付からない!?
「まだ見付けらんねーのかよ?」
『ちょ、石川うるっさい!』
「ごめんなまえー。私と宮村先帰るわ。父がうるさくてうるさくて」
「あ、トオル今日ゲーム貸してー」
「はぁ?じゃあ今から帰んねーと。…じゃ、秀頼んだ」
『ちょ、ちょっと皆…!』
「あ、柳くんも早くしなきゃバスの時間が」
「え、あっ!そうでした」
「ちなみに仙石ならもう帰ったわよ」
「なまえは秀見つけるまで帰るなよー。じゃーなー」
『っい、石川のばかやろぉー!』
私の叫び声も無視して、みんなぞろぞろと帰っていく。ていうか、何も言わずに帰るってどういうことなの仙石くん。君最悪だよ。
『はぁ…』
捜さ…なきゃ。あいつ昔は鬼の人の後ろに隠れてたんだけど、いないし。
早く帰りたいし。…降参、しちゃおうかな?
だって!手がかりも何にもないのに!
『あーっもう!』
「まだ残ってたのか!」
『あ、ぁ、ちょっと安田せんせぇー!』
「なんだ?告白なら聞いてやる」
『違います』
「即答か」
『井浦秀を知りませんか?』
「井浦?…知らないな」
『そうですか。じゃあいいです』
お前早く帰れよー!と後ろから聞こえてきた。私だって早く帰りたいんだけど帰れないんだよ!あの緑を見付けるまでは!
『しゅーうー!』
「はーあーいー!」
『………っは?』
あれ。今…、空耳かな?
おかしいなぁ。
『いーうらくーん』
「なにー?」
『…っどこにいるの!?声しか聞こえないし!』
「ここだって」
後ろで声が聞こえた気がして、バッと振り向くけど視界に緑は入ってこない。…おかしい
『秀…?』
「ん?」
『私の後ろにいる?』
「え゛?」
バッともう一度振り向くと秀が立っていて。…まぁ、説明すると秀は私が振り向くと同時に私の回りをくるくる回って、私の視界に入らないようにしていた…と。
『…なんなのもう!』
「あははー!」
笑う秀を無視して私は教室へ戻る。
「あ、あれ、怒った?」
『怒ってませんが』
「お、怒ってる…!」
机に置いてあった鞄を掴んで、教室を出る。秀はさっきから申し訳なさそうにしょぼんとしていて
『…秀。』
「なに?」
『早く帰ろう。家隣なんだから』
「!…い、行く」
それから二人で学校をでてゆっくり歩く。
『最近どうなの、もとこちゃん』
「受験でピリピリしてるー」
そう言いながらあははと笑う秀を見て、無理してるなと頭の中で考える。
『構ってくれなくて寂しいんだ?』
「え、えぇ?なんでだよ!」
『寂しそうな顔してるからさ!』
「してないってー」
『寂しいときはさ、石川とか、私もいるし』
「…うん。なまえに頼る」
『石川が泣くね』
「俺さぁ、」
『ん?』
「………やっぱいいや」
『なんだよう』
「いや、えっと…」
『好きだー、…なんつって!』
「えぇ!?」
あれ。秀?
顔赤いけど。…風邪ですか。
『しゅ、』
「俺も好きー!…なんつって」
『は?』
「じゃ!また明日!」
そう言って自分の家まで走っていった秀を見て、私は頭の中で考えた。
『…はっきり言いなよ、ばぁーか』
冗談には聞こえなかったんだけど。…ま、明日の朝も会うから。その時にもっとはっきりと言ってもらおうかな。
見付けたのは君への恋(秀おーはよっ)
(なんで今日こんなに早いの!?)
(だって。秀、言うまでに時間かかりそうだから)
----------キリトリ----------
抹茶様!有り難く使わせて
頂きました!
ありがとうございます!
今回は"かくれんぼ"のお題
で書いてみましたが…うー
ん…。なんかぐだぐだにな
っちゃってすみません…。
気に入りませんでしたら他
のバージョンも書かせて頂
きます!なんなりと!
今回は本当にありがとうご
ざいました!(^ω^)