『…マキオ?』

「んー、」

『寝るの?』

「………」



テレビを見ながらうとうとし始めたマキオにそう声をかけると、既に目は閉じかかっていた。…うん。まぁ、いいんだけどさ。彼女が来てるのに寝るなんて良い度胸してるねマキオ君。頭を揺らしているマキオの肩をそっと自分のほうに引き寄せると、簡単にマキオの体勢が崩れる。



「っうお!?」

『寝るなら横になったほうがいいでしょ』



俗に言う‘膝枕’というやつです。
結構上手くマキオの頭を乗せることが出来たけど、膝枕をするのは始めてです。実際にやってみて、やっぱあれだね。結構恥ずかしいね、これ。マキオはあれかな。仰向けじゃないと寝れない人なのかな。さっきからずっと上見てますけど。これ普通横向きなんじゃないの…?



「………」

『…なんで寝ないの』

「いや、寝れねーよ普通」

『せっかくやったんだから寝てよ』

「なまえが勝手にしたんだろ」

『じゃあ、起きて』

「嫌だ」



まっすぐと私を見て言うマキオに言葉が詰まる。えっと、膝枕って寝るとき意外にやる意味あるの…?私はずっと下からの視線に絶え続けなければいけないの?いつまで?
一人でぐるぐる考えながらじっとしていると、下から手がのばされた。



『っなん、ですか』

「…なんとなく」

『はい?』

「……触りたくなった」



小さな声で、呟くようにそう言ったマキオの手が私の頬に当てられて、手が触れている所からじわじわと熱が伝染しているみたいに顔一面が熱くなった。…なんだろ、マキオ寝ぼけてるのかな。マキオの顔を見ると、少しだけ赤くなっていて笑う。



『マキオ顔赤いじゃん』

「うるせ、お前に言われたくねー」

『…私のは、ただの林檎病だし』

「なんだその言い訳」



笑っていた頬をマキオの手がぐにっとつまんで少し痛い。なにすんの、と言うと笑いながら、おもしれー顔、と言われた。私も両手を使ってマキオの頬をつまむと、ぐにっと横に引っ張る。



「いひぇーよ!」

『へんなかおー』

「………」

『いひゃいいひゃい!』

「はなへ」



パッと手を離すと、私の頬に触れていたマキオの手も離れる。ひりひりとする頬をさすっていると、また下から手がのびてきた。



『ちょっと、もうやめ、』



伸ばされた腕が、私の頭の後ろに回されて無理矢理頭を下に下げられる。すぐに離された腕に呆然としていると、私の太ももの上に乗っているマキオの顔がやっと横を向いた。



『え、ちょ、マキオ…?』

「……やっぱ寝るわ」



そう言ったマキオの耳が真っ赤になっていて少し笑ってから、その赤い耳をつまんでやった。







♯キスをしましょう。

(おやすみマキオ)
((寝れねー…))


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