自分の少し前を歩く彼の手はいつもテーピングされている。触ったら、怒られるのかな。…手、繋ぎたい、な。言ってみようかな。



「何をしているのだよ」

『な、何でもない』

「…そうか」



そう言って再び歩き出した彼の後を追う。…やっぱり、言おうかな。



『み、緑間くん!』

「なんだ」

『あの、その……手、とか』



繋ぎたいな、なんて。
あぁ、最後のほう声小さくなっちゃったな。恥ずかしい。やっぱり言わなきゃ良かった。赤くなった頬を隠すために少し俯く。やっぱりいいや。そう言っておこうかな。……それより、さっきから緑間くんが話していない。嫌、だったのかな。やだ、涙出そうだ。何も反応がない彼を見ようと少しだけ顔をあげてみると、



『…え、緑間くん?』

「……手を、繋ぐのだろう」

『いいの?』

「早くするのだよ」



私が出した手をぎゅっと握った緑間くんは、くるりと体を向こう側に向けてすたすたと歩き出す。……どうしよ、顔が暑すぎる。湯気でちゃいそう。



彼の耳が真っ赤だったのを見て、私も更に赤くなった。





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