『えっと…』

「何言ってんすか狩沢さん!」

「ゆまっちこそ何言ってるの!この子には絶対こっちのほうが…」

「静かにしやがれ!」

「お前ら、いい加減に…」



目の前で言い合いをする4人を眺め続けて早10分。言い合いって言っても実際言い合いをしてるのは二人だけなんだけど…。



「…悪いな、呼び止めちまって」

『え、あ、大丈夫です…!』



帽子を被った男性にそう言われて、慌てて答えると、すこし笑われた。……恥ずかしい。



「これから何か予定とかあるのか?」

『え?予定はないです、けど』

「そうか。昼飯はもう食ったか?」

『食べてないです』

「これからコイツらと寿司食いに行くんだが、一緒に行かないか」

『お寿司ですか?』

「ちょっと門田さん!何勝手に彼女に話し掛けてんすか!」

「ドタチン!ゆまっちったら、この子にはこれは似合わないって言うんだけど、似合うよね!?」

「…だから、お前ら」

「お前ら勝手に言い合ってるけど本人に許可取ったのかよ」

「「…あ」」

『は、はは』




×××




今日私は休日なのに朝早く起きてしまって、せっかくだからお買い物でも行こうかなって、家を出て、ぶらぶら歩いていたら「きゃ――!なにこの子!」って女の人に声かけられて困惑していると、あとから来た男の人に「なんなんすかその子!」って声かけられて………あれ、私何しようと思ってたんだっけ



「あぁ、そういえばまだ名前聞いてなかったな」

『あ、***です』

「***ちゃん!***ちゃんって呼んでもいい!?」

「ずるいっすよ狩沢さん!俺も呼んでいいっすか!?」

『ど、どうぞ』

「俺は門田京平だ。よろしくな」

『よろしくお願いします』



ていうか、なんかご飯に誘われて車の中なのはいいんだけど……いいんだけど…!



「はぁ…***ちゃんってば、ほんとに二次元から飛び出して来たんじゃないかってくらいかわいい」

「ほんとっすよねぇ…本当は二次元の世界からトリップしてきた女の子なんじゃないっすか?」

『と、とりっぷ…?』

「あぁ、悪いなこいつらの言ってる事は無視すりゃいいから」

『あ、はい』

「俺は渡草ってんだ。よろしくな!」

『こちらこそ』



どうやら常識人なのは運転手のお兄さんと帽子のお兄さん……渡草さんと門田さんしかいないらしい。



「***ちゃんコスプレとか興味ないかな?」

『す、すみません…そういうのあんまり詳しくなくって』

「コスプレはもう諦めたほうがいいっすよー」

「だってこんなに可愛いのに勿体ないじゃない!」




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