※静誕小説「大好きな君に」
静雄side
------------------------------





『二日も無駄にした…』

「何の話だ?」

『静雄くんの話ー』

「?」



俺の隣の席でにこにことしながら考え事をするあいつ。…一体何を考えているのやら、顔が緩みすぎなんだよ。んな顔して、俺の事以外の事考えてたらどうしようかと思ったが、俺の事を考えているらしい。…緩んでるのは俺の頬か。



『…あ!』

「今度はなんだよ」

『いい事思い付いた!』

「いい事?」

『うん。覚悟しておいてよね!』

「…何の覚悟だよ」



心の準備とか色々だよ。
そう言う彼女に俺は、わけがわからなくなる。

様子がおかしかったのは朝だけで、後はいつもと変わらない一日を過ごしていた。…本当に、おかしくなかったと言えば嘘になるけどな。今日は何故かやたらとノミ蟲野郎があいつに話し掛けていた。むかつくから直ぐに追い払ってやったけどな。

……そして、放課後。
いつものようにあいつと帰ろうと声をかけると、気まずそうに今日は先公に呼ばれてるとかで一緒には帰れないと言われた。



「……また点数下がったのか」

『や、勉強は関係ないよ!』



なんだ。いつもギリギリの点数を取っている彼女の事だからそっち関係かと思ったが。



「んじゃ、俺用事終わるの待ってるわ」

『ううん、大丈夫。今日は一人で帰るよ』

「……ほんとに大丈夫か?」

『やだなぁ。大丈夫だってば』



待つ、と言えばそれも断られる。仕方なくわかったと言えば、あいつは俺に手を振ってまた明日、と言った。
ゆっくりと階段を下りると、下駄箱で調度新羅と会い、途中まで一緒に帰ることになった。



「静雄くんが一人なんて珍しいじゃないか。彼女さんは?」

「あぁ。先公に呼ばれてるとか言ってた」

「そろそろ呼ばれる頃かとは思ってたけど。そっか」

「…言っておくが、勉強関係じゃないらしいぞ」

「え?そうなの?」



新羅も勉強の事だと思ったらしい。
校舎を出てから、隣で一方的に話しつづける新羅に、時折耳を傾けながら歩いていた。



「それでね、静雄く…」

『っ静雄ぉ―――!!』

「っは!?」

「あれ?」



いきなり、大声で名前を呼ばれて後ろを振り向くと教室の窓から身を乗り出して、叫ぶあいつがいて。



『静雄ー!誕生日、おめでとおー!』

「っ!?」

『静雄大好きー!』



…馬鹿か、あいつは!?
俺だけじゃねぇんだぞ、ここにいんの…!俺の隣の新羅も笑ってやがるってのに!



『静雄!』

「っおま、」

『生まれてきてくれて、ありがとう!』

「!?」



俺も声を出して止めようとしたら、俺の声を遮ってあいつは言った。なんの事を言ってるのかわからねぇ。

"生まれてきてくれて、ありがとう"?

今日は何か特別な日だったか。んなこと、どうでもいい。生まれてから、誰かにそんなこと言われた事があっただろうか。…いや、ない。弟の幽でさえ、そんな事は言わない。
困惑する俺にあいつは、笑いながら大きく手を振っている。



「うわー。大胆なことするねぇ!」

「っ」

「君達のラブラブっぷりには驚くばかりだよ!」

「…っうるせぇよ!」



からかう新羅を睨みながら反抗すると、新羅に行かないのかと言われる。



「行く。…来んなよ?」

「はは。行かないよ。後が怖いからね」



新羅にそう言ってから校舎へ向けて全力で走った。





# HAPPY BIRTHDAY!


(なんなんだよあいつは…!)





ってな感じで(^ω^)




prev next
back

×
- ナノ -