*なまちょこ(井浦)




『あれ?掘さん、井浦知らない?』

「えぇ?さっきまでそこにいたわよ?」

『ったく、どこへ行ったんだ。』

「…なに?なまえチョコ渡すの?」

『え、うー…、あぁー、…残り物だよ!多く作りすぎちゃってさ!』

「あやしいわねー」

『あ、私…探してくる!』



1組にいない、ってことは教室かな?
もう、学校は帰るだけで次々と生徒が帰っていく。その中でも、カップルがちらほらといる。今日から、付き合い始めたのかなんだかぎこちない空気のカップルや、周りを気にせずラブラブしているカップルもいる。

…いいなぁ、両思い



『あ、井浦発見。』

「うわぁ、なまえに見つかったー!」

『どう?収穫は?』

「………1個」

『…へ?1個、て…誰から?』

「…あかね」

『あかねって、柳くん?』

「…そうですよー」

『ふぅん』

「なんですか、ひやかしですか」

『じゃあ、いっかー』

「は?なにが?」

『だって、チョコ貰ってるしねぇ』

「え?ちょ、井浦にも説明プリーズ!!」

『井浦のぶん用意したんだけど、別にいいかなぁって』

「えぇ!?なんで!?食べるよ、俺!!」

『一個で十分でしょ』

「だってこれ、井浦宛じゃないんだよっ!!?」



そう言って私にチョコを見せてくる。
…もうラスト一個じゃん



『もう、お腹いっぱいでしょ』

「なまえのは別腹!!!」

『…よし、私にじゃんけんで勝ったらあげよう』

「なにそれ!!俺のために作ってくれたんでしょ!?」

『はい、いくよー?じゃーんけーん…』




***




「やった!生チョコ!!」

『…はいはい、良かったね』

「うまー!!!さっきのより、愛情が入ってるからかなー!!」

『愛情を入れた覚えはない』



私が作ったチョコを頬張る井浦を見て自然と笑みがこぼれた。
…知ってたよ、井浦がじゃんけんで始めに何を出すかぐらい。
わざと負けてあげた私にお礼を言ってほしいね。






―来年も、君のために―




×