*けーき(千景)




「はい、なまえあーん。」

『あの、これはいったい…?』



つい先程、ろっちーが家に来た。いつものこと、なんだけど…。



『なんで、ケーキ?…しかもワンホール』

「いやぁ、今日ってバレンタインだろ?だから、俺からなまえへ!」

『え?普通、女の子から男の子へでしょ?』

「告白は普通男からだろ」

『はい?』



ていうか、私こんなに食べれない……と思いつつも、さっきからろっちーが目の前に差し出してくるケーキをパクパクと食べてしまっている私。絶対太る…。



『ね、…ね!私が食べさせてあげるよ!』

「え?まじで?じゃあ、はい」

『……はい。』

「………」

『え?ちょっと……はい!』

「………」



さっきからろっちーがやっていたように目の前に差し出すが、中々食べてくれない。



『いらないの?』

「…"あーん"は?」

『へ?』

「だから、なまえも"あーん"って言ってよ」

『はい?』



…どうやら、私が"あーん"と言うまで口を開けてくれないらしい。



『うぅ、…あ、』

「………」

『あ、あーん…』

「あー、んむ」



が、頑張った!私頑張った!
てか、もぐもぐしてるろっちーが可愛い…!



『はい、あーん、』

「んー。………っあー、超幸せ!」

『…食べてる時のろっちー可愛い!』

「は?可愛い?カッコイイじゃないの?」

『うん、可愛い』

「俺的にはカッコイイのが嬉しいんだけど」

『いつもは、かっこよくて今は、可愛い。』

「っ、すっごい嬉しいんだけど!キスしてもいい」

『じゃあ、この一口食べてくれたらキスしたげる。…あーん、』

「あー、ん。…んく、はい。じゃ、ここ座って」

『えぇ?そこ行かなきゃダメなの?』

「だーめ」

『えー、』



私はろっちーに近付き、ろっちーの足の上に座った。



『…ち、近い』

「そう?」



それはもう、私が少し顔を上げれば唇がぶつかるくらいだった。…だって、ろっちーが私の腰に手を回しているから。



「じゃあ、今日はなまえから」

『え、』

「俺、目閉じてるから」



そう言うとろっちーはすぐに目を閉じた。意を決して少し顔をあげ、触れるだけのキスをした。



「ほんと、幸せ者だなぁ、俺」

『恥ずかしい…』

「ほんとだ。顔真っ赤」

『う、わ…。見ないでよ』

「やだ。可愛いもん」

『うぅ…』






―ケーキはどうしたっけ?―




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