(黄瀬)




「○ッキーゲームやるっス!」

『やらないから』

「え、なんでっスか!?」



しょんぼりとしてしまう彼を見てため息を吐く。今日は11月11日。誰だこんなイベントを考えたやつは。



『あのね、こういうのは好きな子とやるものなんだよ涼太』

「…だから、なまえっちとやるんじゃないっスか」

『涼太の私への"好き"は、それとは違う"好き"でしょ』



家が近くて、年も同じだったからか幼い頃から、ずっと一緒だった涼太。きっと、家族に向ける"好き"と恋人に向ける"好き"を勘違いしてしまっているんだと思う。



「なんでいつも信じてくれないんスか」

『そういう意味なら私も涼太好きだよ』

「そうじゃなくって…!」



違うんスよ、なまえっち!
まるで犬がわんわん吠えているようにわめく涼太を無視して、見ていた雑誌のページをペラペラとめくっていく。



「だから!」

『あ、この涼太かっこいいよ』

「え、まじっスか」

『うん。やっぱりこういう服似合うよね、涼太』



さっきの情けない顔と一転して明るい笑顔になる涼太。わんこみたいで可愛い。見ていた雑誌を除きこんできた涼太の頭をよしよしと撫でてあげると、はっとしたようにまた騒ぎ始めた。



「そうじゃなくって!」

『どうしたの、涼太。なんか今日おかしいよ』

「…ちゃんと聞いてほしいっス」

『わかった、聞くから。どうぞ』



そう言うと私の前で正座をした涼太になんだなんだと、もっていた雑誌を置いて、涼太を見る。



「俺は、家族としてなまえっちを好きなんじゃなくって」

『……え、』

「本当に、なまえっちが好き、なんスよ」



真顔でそう言ってくる涼太に、少しどきっとする。え、今なんて言った?



「小さいころからずっと、」

『え、ちょ、待って!』

「え?」

『え、好きって、え?』

「好きっスよ?」

『だ、誰が誰を…?』

「俺が、なまえっちを」

『!?』



小さいころからずっと好きっス
そう言ってにこりと笑う涼太。おかしいな、小さいころからずっと見てきた笑顔なのに、ついさっきも見た明るい笑顔なのに、なんでこんなに胸がドキドキしてるの。



『…ちょっと、考えさせて』

「はいっス!」



元気良くそう答えた涼太に少し頭が痛くなった。







♯なんだこれは


(なまえっち?もう考え終わったっスか?)
(…もうちょっと、待って)
(そろそろ限界なんスけど)




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