(井浦) キラキラ輝く満天の星空の下。 仰向けに寝転がって空を眺める。 「スイカ食べたいー」 「ですって」 「なんで俺に言うの…」 「仙石くん、れみも食べたい」 今日は七夕。誰が言い出したのか、みんなで星を眺めることになった。本当に何故こうなったのか。ぼーっと空を眺めていると宮村君がなぜかスイカが食べたいと言い出して、堀さんがそれを仙石くんに言った。ちなみに、メンバーは堀さん宮村くん仙石くんれみちゃん石川くん吉川さん井浦くん、私。桜ちゃんと柳くんも誘ったんだけど、用事があって来れないらしい。 『スイカおいしいよねー』 「でも食べ過ぎると腹が…」 「あー、たまになる」 「俺この間家で食った!めっちゃうまかった!」 「あー、もー、みんながスイカの話するから…」 「いや、最初に言ったのお前な」 「私が作ってきたお菓子ならあるけど!」 「……いやぁ、星が綺麗だ」 「トオル、トオル。あーんしてあげる」 『私家にスイカあったかもー』 「まじで!?」 『うん。食べるなら持ってこようか?』 「んー、でもなまえちゃん運ぶの大変じゃない?」 堀さんにそう言われて、確かに、と気付く。あれを運ぶの面倒だな。重いし。 「えー…、スイカー…」 「やばい俺もくちなおs…スイカ食いてぇ…」 「石川くん顔色が悪いぞ」 「俺、石川のこと忘れないよ」 「私もスイカ食べたいー!」 「れみもー!」 「っていうか、私達星を見に来たんだけど」 『堀さんが一番しっかりしてる』 宮村くんなんかスイカスイカ言って駄々こね始めたよ。石川くんは今にも死にそうな顔してるし。どうしよ、スイカ持ってこようかな。……うん。持ってこよう。家に帰って、スイカ切って、お皿にのせて……みんなが私の家に来たほうがはやい。 『今から家来る?今日親居ないしなんなら泊まりでもいいよ』 「スイカ!」 「えっ」 「え、まじで」 「いいの?」 「みんな寝れるのか…?」 「やった!」 「よっしゃ!」 上から宮村くん堀さん石川くん吉川さん仙石くんれみちゃん井浦くん。 多分、みんな寝れると思う……雑魚寝になるけど。 「じゃあ、みょうじさんの家にれっつごー!」 ××× ぞろぞろとみんなで歩いて私の家へ向かう。 「織姫と彦星ってどれ?」 「え、星があるの?」 「知らない」 「あ!あれ、あれだよ!ほら!ほくとはちせい!」 「北斗七星、ね」 「……知ってた」 「大丈夫だ宮村。お前が馬鹿なのは知ってる」 「ていうか石川くん体調良くなったのか」 『今日七夕だけど、短冊書いてないよねー』 「あー、まず笹がないもんねー!」 『ねー』 「なまえちゃん願い事あるの?」 『んー。あるといえばあるね』 「え、なになに」 『"これ以上成績さがりませんように"とか?』 「お、おぉ…現実的」 『そういう井浦くんはとれみちゃんは?』 「れみはねーれみはねー、えっとー"世界征服!"」 『れみちゃんはなにがしたいの』 「俺はねー!"彼女ができますように!"」 『なんとなくわかってた』 そんな雑談をしているうちに家へついた。みんなを招きいれて早速スイカを切りにかかる。 「あ、スイカ食べに来たんだった」 「お前が言い始めたんだろーが!」 「うわー、石川くんが怒る…」 『はい切れたよー』 「スイカ!」 「俺一番でかいの!」 「わかった。秀は一番小さいのな」 「なんで!?」 「どれも大きさ同じでしょ…」 「あたしの一番おっきいよ!」 「れみのもでかいよ!」 「俺は小さいのでいいや」 大きいの大きいのと言ってみんなが持っていったあまりをひとつ手にとって食べる。 『…スイカに塩つける人』 「つけない」 「つけるとおいしくなんの?」 『らしいよー。私しょっぱいの無理だー』 「私もこのままでいいわ」 「あたしもー」 「れみもー」 しゃくしゃくとスイカをまるまる一つ食べ終わって、時計をみると既に12時を回っていた。まぁ、集まるのが遅かったからね。堀さん宮村くん石川くん仙石くんは普通だけど、れみちゃん吉川さん井浦くんが若干眠たそうだ。 『みんな寝る?』 「俺まだ起きてれるけど、みんな眠たそうだし寝てもいいよー」 「私も」 「俺も」 「れみが寝た」 「え、いつのまに?」 『布団もってこよう』 「悪いな」 『いえいえー』 ささっと人数分の布団を持ってきて、一枚をれみちゃんの体にかける。 「じゃあ、寝る場所決めようぜー」 「みんな床に寝ればよくない?」 「いいよー」 「あ、吉川さんと井浦くんも寝た」 「えっ、はや」 「じゃあ適当にもう寝転がって寝るかー」 『布団一人一枚ねー』 「あー、なんか修学旅行みたい」 「なー」 「え、会長こっちくるの?綾崎さんの隣じゃないの?」 「え」 「ちょっと、トオルはユキの隣でしょ」 「え」 『どこでもいいけど、そうしたら?』 「い、いや俺別に吉川とは…」 「はやく行きなさい」 「ハイ」 「…もと〜」 『「「「!?」」」』 みんなで会話していると、寝ているはずの井浦くんの声がしてみんな驚いた。どうやら寝言らしいけど……"もと"って誰? 「びびった。多分妹だわ」 「あぁ、妹」 『そ、そうなの』 「井浦結構シスコンなのね」 「あ、会長も寝てる」 「次々と消えていくな」 「なまえちゃんはどこに寝るの?」 『へ?………あ、』 堀さんにそう言われて周りを見渡すと、私の寝る場所は既になくなっていた。自分の部屋に行くっていうのもあるけど…みんな床で寝てるのに私だけベッドっていうわけにはいかないよね。 『どうしよ』 「ちょっと待ってろ」 『?』 寝ていた石川くんが起き上がって、井浦くんの所まで歩いていく。…まさか。 「秀、もっと隅に行けって」 「ん〜、」 寝ている井浦くんを蹴って隅まで追いやる石川くん。鬼だな。いや、私のせいなんだけど…っていうか、私井浦くんのとなりか。……いや、別にいいんだけどね? 「はいここ」 『あ、ありがとう』 「トオル容赦ないわね」 「コイツなかなか起きないから大丈夫だって」 『あ、宮村くん寝てる』 「えっ!?」 驚いた堀さんが隣を見ると、宮村くんがすやすやと気持ちよさそうに眠っていた。 「…俺らもそろそろ寝るか」 「そうね」 『うん』 おやすみ、と言って私も寝転がる。そういえば私の家に泊まりなんて初めてだな。やっぱり桜ちゃんと柳くんも来れば良かったのにな。くるっと横に体を向けると、案外近くに井浦くんの顔があってすぐに仰向けになった。周りからはみんなの寝息が聞こえる。堀さんと石川くんももう寝たかな。なんか、眠れないな。寝やすい体勢を探そうと何度か寝返りをしていると、隣から声をかけられた。 「みょうじさんみょうじさん」 『!?い、井浦くん寝たんじゃ、』 「隣からゴソゴソ聞こえたから」 『あ、ごめん』 「いいよ。どしたの?トイレ?」 『違う、寝付けなくて』 「えー、みょうじさん子供みたーい」 『井浦くんって小声で話せたんだね』 「酷くない?」 『ふふ』 「…じゃ、俺がみょうじさんが寝るまで話しててあげよっか」 『え、いいよー、寝て』 「いーよ。俺も目覚めたし」 暗い部屋の中で、窓から漏れた月の光がちょうど井浦くんの顔に当たる。あ、笑ってる。 「結局短冊書かなかったよね」 『彼女くださいってやつ?』 「…うん」 『井浦くん書かなくても大丈夫でしょ』 「いやいや大丈夫じゃないから書くんだよ」 『えー?』 そんな会話を約10分くらいしていると、だんだんと瞼が重くなってきた。あ、もう寝そうかも。 『ん、』 「寝る?」 『う、ん。井浦くん、ありがとね』 「いいよ。……みょうじさん俺ね、」 『…んー?』 ああ、ダメだ目がかすんできた。 「本当は誰でもいいんじゃないんだよ」 『?』 「本当は、―――…」 井浦くんのその言葉を聞き終わる前に、私は眠ってしまった。完全に目を閉じる前に見た井浦くんの顔は、少し赤かったような気がした。 ♯たくさんの星に見守られ (あ…れ……朝?) (なまえちゃんおはよ!) (おはよ、みょうじさん!) ((夢、だったのかな)) ×
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