(ボリス)




「俺なまえの事嫌いだから」

『……は?』



外に出て木の下で読書をしていると、何処からやってきたのか、ボリスが目の前に居て突然そんな事を言われた。驚いて、は?と返す私にボリスはニコニコとしている。



「だからさ、俺なまえが嫌い」

『や、そうじゃなくって…』



だって、少し前の時間帯の時は私にすきすき言いながら引っ付いていたのに。私と離れてから何かあったのだろうか。……あ、ああアリスと付き合う事になっちゃったとか…!?



「なまえは?俺のこと嫌い?」

『え、あ……え?』



なんでそんなことをニコニコしながら聞いてくるんだろう?私はなんて答えたらいいの?



『わ、私は、嫌いじゃ…ないよ?』

「………」



考えた結果、そう答えると、さっきまでニコニコしていたボリスの顔が、目が、いきなり鋭くなる。



『…え?』

「本気で言ってんの?」

『え、えぇ…?』



なんで、私がボリスを好きだといけないのか。迷惑なのかなぁ…?



「なまえは俺のこと好きなのかよ?」

『う、うん』

「俺は嫌いなのに?」

『私が好きだと駄目なの?』

「駄目」

『な、なんで?』

「なんでって俺は嫌いだから」



ボリスの言っていることがわからない。嫌いってなんですか。今までの好きは何だったんですか。思考回路はぐるぐるぐるぐる。あ、なんか涙出そう。



『訳わかんないよボリス!』

「だから!俺はなまえが嫌いなんだって!」

『私はボリスが好きなんだよ!』

「だーかーらー!」

『ボリスだって今まで好きだって言ってきたのに!』

「だって今の時間帯はエイプリルフールなんだぜ!?」

『は、はぁ!?』



なんだそれ、初耳だよ。ていうか、この世界でもそんなのあるの?



『…そんなの知らない!最初に言ってくれなきゃ!』

「あれ?俺言わなかった?」

『言ってないよ!』

「…じゃあなまえの"好き"は嘘じゃないっていうことだよな?」



へーえ、ふーん、とか言うボリスに汗が出てくる。うわ、言っちゃったよ…!そういえば私ボリスに好きだなんて言ったことないんだ!



『…わ、私も嘘ー』

「嘘じゃないんだろ?」

『う、嘘じゃないです…』

「へえ?」



ぐっと顔を近づけてくるボリスに、後退りしようとしても私の背中は木にぴったりとくっついている。



『ぅわ、』

「もう一回」

『…へ?』

「俺はなまえが嫌い。なまえは?」



鼻がぶつかってしまうほどボリスの顔が近い。ボリスが喋ると、顔にボリスの息がかかる。



『わ、たし…は、』

「うん」

『……ボリスが、大っ嫌、っ…!』



言い終わる前に、ボリスの顔の距離がゼロになる。目を閉じる間もなく、すぐにボリスの顔は離れていった。



『…ボリス』

「嫌いって言われてさ、こんなに嬉しいの初めてだ」



少し照れたように笑うボリスを見るのは、初めてだった。









#Like Like Love


(…ボリスが可愛い)
(まぁ、嫌いよりも好きのが嬉しいんだけどさ)




×