『こーんにーちわー!』 「はあーいー!」 秀の誕生日。ちょっと遅れ……や、めちゃくちゃ遅れちゃったけど、今日祝う! 『これ宮村くんのとこで買ってきたー』 「お、ケーキー!」 『もとちゃんのぶんと、おばさんとおじさんのぶんと、おじいさんのぶん!』 「え?俺のは?」 ショックを受けている秀に、にやにやと笑いながら後ろに隠していたのを取り出す。 『えへへ。秀のは手作りー!』 「え!?まじで!」 『まじまじ!宮村くんに教えて貰ったのさー』 教えてもらってるときに、女としてのプライドが破壊されたけども…うまくできたからよしとする! 「あがってー」 『お邪魔します!』 家に入るのは初めてじゃないから緊張はしない。秀の両親とも、もとちゃんとも顔見知りだ。 『まだ襖閉めてるんだー』 「んー。開けるともとが怒んの」 『女の子だから仕方ないよ。私でも嫌だと思う』 「えっ……男連れて来るときとか?」 『もとちゃん彼氏できたの?』 「…彼氏、というか……ッチ」 何か思い出したように舌打ちをする秀に驚く。妹とられるのがそんなに嫌なのかなぁ……シスコン。 『まぁまぁ、落ち着いて』 「やっぱ襖開けといたほうがよくない!?」 『駄目。怒られるよ。それよりケーキ食べよ』 「あ!そうだった、なまえのケーキ」 秀はフォーク持って来る、と言って立ち上がった。一人になった室内を見渡す。いつ見ても変わらない、秀の部屋。ここへ来ると何故か安心する。寝転んで天井をぼーっと見ていたら秀が帰ってきた。 「はんふみへるよー」 『私もフォークー!』 秀はフォークを加えながら私にパンツ見えるよ、と言ってきた。 『別に秀なら見られてもいーよ!』 「…そういう事をいわなーい」 『んふふー』 ケーキを箱から出して秀に見せると目をきらきらさせていた。 「すげー!」 『でしょでしょ!頑張ったんだぁ!』 「…俺のため?」 『んー。私が食べたかったから?』 「………」 『うそうそ!秀のために作ったの!』 しょんぼりしてしまった秀を見て急いで訂正する。 『とりあえず、食べてくだされ』 「じゃあ、なまえから。毒味」 はい、あーん。 と言いながらケーキをフォークにさして私の口元まで持ってくる秀。…毒味とか、なんて失礼な奴だ。 「ほらほらぁー」 『くそぅ。じゃあ秀も同時に食べてよ。ほれほれ』 私も秀と同じようにフォークを秀の口元まで持っていく。 「…しょうがない!死ぬときは一緒!」 『なにそれ。まじ失礼!』 「よし。…せーの!」 『っむぐ』 秀の、せーのの合図で口の中に押し込まれる私の手作りケーキ。うむ。やっぱりおいしくできてる。流石宮村くんだな。 『どうどう?』 「…まずくはない!」 『うわぁ!最悪だよ!来年は作ってやんないからね!』 「え、うそうそ!超おいしい!」 『……ほんとに?』 「うん。ほんとに」 にっこりと笑う秀を見て、良かったと一安心。 『お祝い、遅くなってごめんね』 「いーよ。なまえだし」 『来年も手作りケーキでいい?』 「ん。上手いから!」 『えへへ。次はもっとおいしいの作るから!』 「期待してるー」 『…あ、そういえば』 「うん?」 もぐもぐとケーキを食べつづける秀を見ながら、そういえばまだ言ってなかったなと思い出す。不思議そうにこっちを見てくる秀に笑いかけて、 『誕生日おめでとう、秀』 また歳とっちゃったね、なんて言うと秀は笑って、なまえも同じだけ歳とるんだよ、なんて言ってきた。 # HAPPY BIRTHDAY! (秀流石に全部は無理でしょ?) (え?食べれるけど) (うそだぁー!) 120207. ×
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