▼ボリス
※連載主




『あまけしておめでとー?』

「"あけまして"おめでとう、よ」

『あけましておめでとう!』

「そうそう」



…で?これは何という呪文でしょうか、アリスさん。教えて貰ったはいいけど、使い方がイマイチ



「これは呪文じゃないわよ」

『えっ、そうなの?』

「当たり前でしょう?これはね"新年の挨拶"よ」

『"新年の挨拶"?』



不思議に思って聞き返すと、どうやらアリスのいた世界では決まった"時間"があり、それを一周したときに年が明けると言い"あけましておめでとう"は、その時の挨拶だという。



『…難しい』

「そうね。ここには決まった時間がないもの」

『うーん。じゃあ今日が"あけましておめでとう"でいいや』

「…そんな簡単に」

『だってわかんないもん』

「そう、だけど」



うーん、と少し頭を抱えたアリスは暫くして、まあいいかと笑った。



『よし。じゃあみんなに新年の挨拶しなきゃ』

「えぇ!?いいわよべつに!」

『えぇー。つまんないー』

「……説明するの面倒だもの」



ボソッと言ったアリスの言葉に、それもそうかなと苦笑する。



『じゃ、ボリスだけでも挨拶しにいこー』

「行ってらっしゃい」

『アリスは行かないの?』

「私はいいわ。ブラッドに借りていた本を読みたいの」

『そっか』



それからアリスと別れて一人、ボリスを探す。見付けられるかな。




☆☆




『…みつからなーい』



まぁ、挨拶しなくてもいいんだけどさー。つまんなーい。
とぼとぼと森を歩いていると、大きな木の下にチラッとピンクが見えた。



『ボリスー!』



呼んでみたけど、返事は無し。ピクリとも動かない。……死んでないよね。大丈夫だと思いつつ、そーっと近付いてみる。



『…ボリス?』

「………」



ボリスは寝ていました。でも、珍しいな。いつも人が近付くとすぐに目を覚ますのに。そう思ったけど、よく見てみるとボリスにはわずかに傷跡がある。きっと"遊んで"疲れたんだろう。



『傷だらけだし…』



そっと傷口を触れると少し痛そうに顔を歪めていた。それにしても熟睡している。試しにぷにぷにと頬をつついてみた。



「ん……」

『!』



起こしてしまったかとびくびくしていたけど、まだすやすやと寝ていて、ほっとした。せっかく気持ち良く寝てるのに起こしちゃったら可哀相だもんね。
どこかへ行こうかと思ったけど、もったいないからボリスの寝顔でも眺めようかな。



『(起きそうにないなぁ)』

「………」

『(…寝たふりだったりしないよね)』



じいっと見ていたら、いきなりボリスの目がパッと開いてびっくりして少し離れた。でもそれはボリスも同じだったらしい



「なまえ!?」

『あーあ、起きちゃった』

「っ何してんの」

『だってボリスの寝顔珍しいから!』

「全然気付かなかった…!」



あー!と頭を抱えているボリスを不思議に思いながら、当初の目的を思い出した。



『あけましておめでとう、ボリス!』

「…え?」



何言ってんの、という顔をしたボリスにアリスから聞いた事を話した。



『だからね今を一区切りにして、これからもよろしくねって事で!』

「ふーん」



よくわかんないけどと言うボリスに笑っていたら、いきなり抱きしめられてその場に倒れこんだ。



『…ボリス?』

「もう少し寝ようぜ」

『えー、私も?』

「まあまあ。いいじゃん。少しくらい」



そう言って瞼を閉じるボリスを見ながら、ほんとによく寝るなぁと思いつつ、私も静かに瞼を閉じた。







#これからもよろしくお願いします

(ずっと一緒にいようね)




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