▼井浦



はぁー…、



『…つまんなーい』



部屋で一人、呟いた。
年が明けてしまうまであと10分。



「なまえー!お蕎麦はー?」

『…いらなーい』

「早く降りてきなさーい」

『だから、いらないってばぁ!』



返事はなし。ちゃんと聞いてよねー!食べる気分じゃないっての。
おもむろに携帯を開いてメールを読み返す。…会いたーい。メールを読んで思い出すのは彼の顔。



『…秀何してるかなー』



会いたいって、こんな時間に会えないけどさー…。一人はやっぱりさみしーよー。



『うあ―――!』



じたばたと暴れると下から大きな声で、うるさい!と言われるから大人しくする。…年が明けるまで、あと2分。



『みんなからメール来るかなぁー』



すこし楽しみになる。あと数分もすればメールが届くんだ。そう思っていたらメールが届いた。



『え?』



誰だ時間間違えたの。笑いながらメールを開く。



『秀、からだ。』



本文を読んでみて、ん?と思う。
…"あと、ちょっと"って何だろ?
そう思って、ふと時計を見ると調度日付が変わっていて。あーあ、と思っていたら



「なまえー!ハッピーニューイヤー!」

『!?』



え!?
外から大きな声で名前を呼ばれて、びくっと肩が上がる。急いで窓をあけると、



「あ、なまえー!あけおめー!」

『あけおめ、って……何で!?』

「散歩だよ、散歩」



ニコニコと話す秀にちょっと待ってて、と言い急いで階段を降りる。散歩って何よ散歩って!そう思いながらも、どんどん頬が緩む。



「あんた呼んでるわよ」

『わ、わかってる!来ないでよね!』

「邪魔したりしないわよー」



お母さんに釘をさしてから、急いで靴にはきかえ外に飛び出る。…あぁ、服装とかもうなんでもいいや。



『秀!』

「今年もよろしく!」

『なんでこんな寒いのに…!』



そう言って私は持ってきたマフラーをぐるぐると秀の首に巻く。



『で、散歩って?』

「妹と母のパシリの帰りだよ」

『そ、そっか…』

「うん。…ここに来たのは、なんていうか、その」

『……?』



マフラーに顔を埋めて、もごもごとした秀に、何?と聞くと、少し視線を逸らしながら言った秀の言葉に私は顔を真っ赤にする。



『っ、』

「えーと…理由はそれだけ……です」

『っ秀大好き!』

「うわ!?」



がばっと抱き着くと少しよろけながらも、しっかりと受け止めてくれる君がすき。色々あるとおもうけど、今年も一年よろしくね。







#"会いたいなー、なんて"

(私も思ってたよ)
(はずー…)




×