※連載主


『廉造、お願いがあるんだけど…』

「なん?」

『…携帯貸してくれないかな』

「は?」

『何も言わないで貸してください!』

「な、何に使うん?」

『…電話』

「なまえ携帯ぐらい持っとるやろ?」

『いいから!』



バッと携帯を取り上げて走る。



「ちょっ!?」

『すぐ返すからぁ!』




×××




『うわぁ、緊張する…!』



廉造の携帯を開き、電話帳を見る。その中に目当ての名前を見つけ、電話をかける。…出てくれるかな。
プルルル…という音が聞こえ、胸がドキドキする。



カチャ
『!…もしも〈廉造ォオオ!!俺に何の用や!〉』



もしもし、と言う言葉を遮って、叫び声が聞こえる。



『き、金兄…?金兄なん?』

〈……?何や、声変わりでもしたんか?〉



私が知っている声よりも低い声が聞こえて、少しドキドキする。



『違うよ、金兄。私、廉造やないよ』

〈誰やねん、何で廉造の…〉

『あはは。私だよ、なまえだよ。金兄覚えてる?』

〈なまえ…? なまえ!?〉

『わ、声大きいよ、金兄』



突然電話の向こうで叫んだから、咄嗟に携帯を耳から離す。



〈おま、今まで何やっとったん!?〉

『それ竜達にも言われたー。』

〈何や、坊と一緒なんか?〉

『うん。一緒に正十字学園にいるよ。廉造も元気だよ』

〈…アイツの事はどうでもええ〉

『金兄、声低くなったよね』

〈そうか?なまえは昔より、かいらしい声になったで?〉



ボっと、顔が赤くなるのがわかる。



『き、金兄の声もかっこいい…よ、』



な、何言ってるんだ私は…!
言いたかったのはかっこいいじゃなくって!



『あ、えと、…金兄?』

〈なん?〉

『もう夜になっちゃったけど、えっと』

〈?〉

『た、誕生日おめでとう…!』

〈……〉



私がそう言うと、金兄は黙ってしまった。



『金兄?』

〈…ほんまに、なまえはかいらしな〉

『っ…!』

〈そっち行って抱きしめたいわ〉

『な、なに言ってるの…!』

〈またこっち帰ってくるんやろ?〉

『う、うん、挨拶しに行くよ』

〈柔兄と楽しみにしとるわ!〉

『…うん、なるべくはやく行けるようにする』

〈おん。 またな、なまえ〉

『うん。 またね、金兄』



電話を切って、その場に座りこむ。
うわ、顔が、熱い…。声、かっこよかった。会いに行きたいなぁ、柔兄にも会いたい。きっと二人とも、昔よりもずっとかっこよくなっているだろう。



『…廉造に携帯返すの明日でもいいかな』



赤い顔を見られたくないから。








Happy Birthday




(…金兄と何話したん?)

(っな!?何で知ってるの!?)

(履歴見ればわかるやろ)

(それより、なんで怒ってるの廉造)

(…別に?怒ってないえ?)

(なにこの人怖い)





111117




×