*ちょこれいと(正臣)




「…つまり、俺はこの日をすごく…すごーく!楽しみにしていたわけだ」

『あ、帝人、杏里ー。友チョコだよー』

「あ、ありがとう…っ」

「なまえさん、良かったらこれ…」

『え?くれるの?ありがとう、杏里大好き!』

「…って、聞けよ!!」

『話が長い』



ほんとに正臣は回りくどい言い方をする。欲しいなら言えばいいのに。



『…正臣、何個貰った?』

「んー、ざっと20個ぐらい?」

『はいはい、そんだけあれば十分でしょーが』

「いやいや!まだ本命のなまえから貰ってないし!」

『あ、ごめん。正臣のぶんないや』

「はぁっ!?」



正臣は大声を上げて驚き、すぐに不機嫌になった。



『うわぁ、そんなに欲しかったの?チョコ』

「…なんで、帝人にはあるんだよ」

『それは、大切なお友達だから』

「じゃあ、俺は!?俺はなに!?」

『…はぁ。わかった、ちょっと待ってて』



あまりにも不機嫌になったので予定変更。私は、近くのコンビニへ走った。




***




『はい。チョコレート』

「え?これは、あの10円で買えるお手頃の…」

『うん、チ○ルチョコ』

「…。そーじゃなくてさぁ、」

『うん?いらないの?』

「俺は、なまえの手作りが良かったわけ!」

『えぇー…。そんなこと言われても。もうないし』

「はぁ…。俺は今日この日を楽しみに生きてきたっていうのに…」

『もう、うだうだうるさいなぁ…。じゃあ、これ食べちゃうからね?』

「えっ!?あ、ちょ、待てって!」



正臣がそう言った時にはチョコはもう、私の口の中で溶けはじめていた。



『おほいよー』

「………」



もうすぐ溶けてなくなる、というところで、正臣が無言で近付いてきた。



『?まさ、っんぅ』

「………、」

『っは、ちょ、まっんむ…』

「っごちそーさまでした!」

『っは……ば、ばっかじゃないの!?』

「なまえがチョコくれないからだろ?」

『もう、やだ!正臣になんか一生チョコなんてあげないんだから!』

「あ、ホワイトデー楽しみにしてろよ!」

『っ、いらない!お返しなんか!』

「あー、楽しみだなー!ホワイトデー!」

『正臣、最悪っ!』






―甘かったのはチョコ?それとも、―




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