(正臣)


「トリックオアトリート!」

『さっさと家へ帰れ』

「酷すぎだろ!」



誰か、早くこの人を何処かへ連れていってください。今日だけは、今日だけは会いたくないんです。どうしても。



「よっし、わかった!お菓子貰ったら帰る!」

『はい、どーぞ。チ□ルチョコ』

「……」



とりあえず、早く離れないと。ろくなことがないんだから。



「これは、ちゃんとしたお菓子ではないと見た」

『はー?』

「ってことで、なまえは悪戯決定」

『っな!?なにそれ!ちゃんと渡したじゃんか!』

「いーや!こんなのは卑怯だ!」

『意味わかんないし』

「10円で助かると思ったら大間違いだからな」

『お、思ってないし』

「…よしきーめた!」



正臣はそう言って私の家に勝手に上がりこむ。私が追い出そうとしたら正臣はにやりと笑って、



「ハロウィンでお菓子を用意しなかったらどんなことが起こるのか教えてやるよ」



そんな事は、知りたくない。だから嫌だったんだ!正臣を長居させるのは…!



『帝人ぉ――!!助けてー!』

「残念だな!今日は帝人はいないぜ!」

『や、ちょ、掴まないでよ!』

「さあさ、ベッドまで行くかー」

『行かない!絶対にいかないー!』

「え?歩けない?しょうがねーな」

『きゃあ!?』

「よし、行くか」



そう言って私を運んでいく正臣の顔面をぶん殴ろうとしたら、もうそこはベッドの上で。私の両手はなぜか使えなくなっていた。…来年は、ちゃんとしたお菓子用意しようかな。




×