(正臣)


【私達、付き合う事にしました】




『いーい、帝人?何を言われても動揺だけはしちゃだめだからね』

「う、うーん…。本当にうまくいくのかなぁ…?」

『なによ!杏里を妬かせたいんでしょっ!?』

「ぼ、僕は別にッ…!!」



そう言って顔全体を真っ赤にしてあたふたする帝人を前に、なんてピュアボーイなんだと思ってしまった。



「…なまえちゃんこそ、正臣を妬かせたいんでしょ」

『は、はぁっ!?違うし!私は帝人を応援しようと…と、とりあえず行くよ!』



私は帝人の腕に自分の腕を絡めて、教室を出た。杏里は先に行ってしまったようで教室にはいなかった。
下駄箱の所まで歩いていくと正臣らしき頭がちらりと見えて、少し歩くのが速くなる。



『正臣ぃ――、っ!?』

「そ、園原さんっ!?」

「え、なまえと帝人!?」

「竜ヶ峰くん…!?」



4人ともびっくりしてしまった理由は、

…正臣は杏里の腰に手をまわし、私は帝人の腕に自らの腕を絡めていたから



「え?お前らどういう…?」

『!……わ、私達付き合うことにしたんだぁー。ね、帝人?』

「えっ!?…う、うん」



少し上目遣いになるように帝人の顔を覗き込めば帝人の顔はぼぼぼっと赤くなった。
…動揺するなって言ったのに



『で?杏里と正臣は?』

「っ、あ、あぁ!!俺達も付き合う事にしたんだよな!杏里!!」

「え!?っは、はい!!」

『…ふーん』



はっきり言ってこんな展開になるなんて予想外だ。私は杏里と正臣の驚いた顔を見たら「なんちゃって」と言って終わりにするはずだったのに、これではもう引き下がれなくなっちゃうじゃないか



『………』

「………」



私と正臣は見つめ合って無言。
杏里と帝人はさっきからそわそわしている。きっと杏里は正臣に触られていることにそわそわして、帝人は私がぎゅっと抱き着いているからだろう



『………』

「………」



うわぁ、嫌な沈黙だなぁ。
どうしよう、どのタイミングで言えば…。そう考えていたとき、帝人が私の耳に顔を近付けて「どうするの?」と言った。そ、そんなに近くで言うことはないんじゃないの…?
さすがの私も、少し恥ずかしくなって顔が赤くなった。



「っ、」

『!?』



私が赤くなった瞬間に、誰かに腕を引かれて気付いたときには走っていた。
帝人、置いてきちゃったんだけど

………正臣?




**




少し走った所で足が止まった。



『ちょ、…まさおみ?』

「…………かよ」

『なに?』

「ほんとに帝人と付き合ってるのかよ」



いつもより少し元気がなくて、表情は悲しそうだ。



『……正臣こそどうなの』

「っ俺と杏里は嘘に決まってんだろ!!」

『…そっか』

「俺は帝人が杏里の事好きだと思ってたからやったのによ…」



そう言ってボソッと
本命はなまえかよ、と言う正臣に私は満面の笑顔で



『なんちゃって!』

「は!?」

『私は帝人と付き合ってないよー。』

「だ、だって赤くなってただろ!?」

『あ、あれは…その、耳元で話されたのが恥ずかしかっただけで…』

「なっ!?…なんだよー…。」



頭を押さえながらしゃがみ込む正臣の近くに行って、ちゅ、と正臣の頬にキスをした。



「え、は!?」

『私は、正臣が好き』

「…それはホント?」

『さぁね』







#嘘かホントか


(決めるのは君だよ)




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