「生きたい…!」

そう叫んだ男の首から真っ赤な血が弾けた。 僕の右手の苦無は、一仕事終えたと血を垂らす。
そうだね、生きたかっただろうね。でも相手が悪かった。諦めて、と呟いて、頬についた血を拭き取った。
ああ、新調した苦無も刀も真っ赤だ。せっかく迷って決められなかった僕に三郎が選んでくれたのに。
今日は何人分の命だろう?

(あ、)

ふと、思い出した。
今日は三郎の誕生日だ。

(三郎が生まれた日、)

贈り物も何も用意していない事に気付いて、ふう、とため息をついた。
最近は物騒な任務が多くて、忘れてた。

(最悪だ、)

三郎はさっき東に向かうって言ってたな。
血溜まりを後にして早足で向かう。

(三郎、)

僕の唯一の、命よりも、護らなくてはならない恩人よりも、絶対的な、
生まれた時から傍にいたかったひと。

東の森の外れに、三郎は立っていた。青い忍装束を着た、小さな三郎。

「三郎、」

僕に気付くと、安心したように目を細めた。

「こっちは終わったよ」
「ああ、私も片付いた。報告して戻ろう」

目を細める三郎は確かに僕の顔だけど、これは僕の顔ではない。

「三郎、」
「どうした?」

「生まれた瞬間から、傍にいたかったんだよ」

でも、それは叶わなかったから、

「最後は、一緒にいようね」

生まれてきてくれて、ありがとう。

「誕生日、おめでとう。三郎」

森の間から差し込む朝日が、血溜まりと三郎を照らしてああ、なんて綺麗なんだろう、と思った。



***
わたし(三郎ってふたご座だったな…)
はちやくんの日!!
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