仙蔵が卒業後。
利吉くんとお仕事してます。






煙草をくわえる口元が好きだ。
でも利吉さんが煙草を吸う横顔は嫌いだ。決まって遠くを見て、私の知らない何かを見ているから。



「利吉さん」
「ん、」

ぱっと顔を上げて、煙草をに口から離す。

「そろそろ夜になりますよ」
「…ああ、もうそんな時間か」
「何も食べなくて大丈夫ですか?作りますけど」
「いいよ、疲れてるだろ」
「それは貴方も同じでしょう」

確かに私も利吉さんも疲れていた。
朝方まで戦が続いていて、ずっと血生臭い場所にいたから鼻がおかしくなりそうだ。
卒業をして、憧れの大好きな人と一緒に仕事ができる。それは嬉しいことなのに、どうしてか忍術学園にいた頃のたまにしか逢えない逢瀬の方が幸せだったと感じた。
利吉さんの手に持つ苦無と手裏剣の金属音が耳に痛い。

「利吉さん、昨日の、」
「…ん?」
「男達の中に、知り合いでもいたのですか」

利吉さんの目が見れない。

「…どうした、仙蔵」
「いえ、貴方が昨日の戦からずっと考え事をしているように見えて」
「…」
「昨日の、男達は、…もう殺されたと」
「私達の味方の軍に刃を向けたんだから当たり前だろ?」
「違います」

疲れきって乾いた笑いを見せる彼が、いつもより弱々しく見えた。

「…」
「あの中の一人は、貴方に銃を向けていました」
「…ふうん、流石仙蔵はよく見てるな」
「…貴方の過去をあれこれ聞きたい訳じゃないんです。 …だけど、」
「心配、してくれてるんだ」
「…」
「ありがとう、仙蔵」

見知った顔がいた事は確かだけど、特にそれを気にしている訳じゃないと利吉さんは言った。
深くは追及出来なかったし、しなかった。
ずっと綺麗だと思っていた私の頭を撫でてくれる利吉さんの手は、実はずっと、私が思っているよりもずっと汚れていたのかもしれない。

ほんの少しの違和感と、躊躇いを、私はいつになったら貴方に言えるだろう。


煙草の煙は目にしみる。だから、嫌いだ。



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