抱きしめると涙が出た。見られたくないから俯くと、優しい声で名前を呼ばれた。

「みよ、流れ星見た事ある?」
「…ねぇ、…かな」
「真っ暗な山とか行ったら見えるよな、多分!栗鼠とかいるかな」
「いるだろ、そりゃあ。海だから見ないだけで」
「なぁ蛍は?みよ見た事ある?」
「ねぇなあ、重は?」
「…俺もないや。見た事ないものって結構あるね」
「そうだな」
「…例えばさ、俺の目と、みよの目が、見えない何かで繋がっててさ」
「うん?」
「俺が見たものが、みよにも見える」
「…うん」
「遠い場所にいても、お互い今何を見てるか解る、流れてくる」
「うん」
「…まあ、今思い付いただけなんだけどさ。どう?」
「…良い時もあれば、嫌な時もあるんじゃないか」
「はは、そうかも」
「みよが何を見てるか、全部解ったら…どんな感じかなぁ」
「…どうだろうな」
「あ、時間だよ。みよ行こう!」
「重、手ぬぐい忘れんな」
「ああ忘れてた、サンキュー!みよのは?」
「あるよ」

遠く離れても傍にいて、今なにを見ているか解って、そうだ、俺はそれを望んでた。
いっそ、ひとりの人間になりたい。重の中にいたい。こいつの中から、こいつの目で、世界を見てみたい。
ずっとずっと小さい時から傍にいた。もう重が隣にいるのは当たり前になってしまったけど、ならばいっそ生まれてから死ぬ迄一緒なら。一緒に海に溶けて死ねるならば幸せだと思う、なんて。

…馬鹿馬鹿しい考えだ。
重は笑ったりしないだろうけど、格好悪くて言えない。


(なぁ、今、なにを見てる?)

願わくば、肩を並べて、同じ青の景色を。

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テーマ「人外ファンタジー」
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