重は体温が低い、と思う。
あまり人を触る機会がないから。
重から言わせると、俺の体温が高いだけだというが、重に触れると温かいからいいなと思う。寝ていて身体に触れる部分がじんわり温かいから、安心する。
なのに、

「…何処に行くんだ」

離れる体温に気付き、体温の主の寝衣を引っ張った。

「…何処って、厠だけど…。みよ兄も一緒に行く?」
「…いや、いい」

引っ張った手を離し、戻ってくるのを待つ。

「なんか、みよ兄がお待ちかねだと思うと、急いで手も洗わずに戻って来たよ」
「汚い。洗ってこい」
「嘘だよ」

笑いながら、布団に潜り込んで抱き着いてきた。

「何だ」
「いや、先刻俺が厠行くのも止めるくらいだったから、甘えたいんだなー、て」

そう言って、抱き込むようにして髪をわしゃわしゃしてくる。
そういう訳じゃない。

「…、別に止めてないだろ」
「でも、寝間着引っ張ってたでしょ。てゆか、起きたんだね、珍しい」

それは事実。
心地良かったのがなくなったから、…なんて言ったらもっと抱きしめられるだろう。嬉しいけど悔しいので言わない。
抱き着いてきた重の体温は、低くてもちゃんと温かかった。ふと海の中を思い出す。冷たい海の中でも、重に触れると温かい。
それがなんとなく嬉しかった。

「…、何、どしたの?」

重の体温が、もっと温かくなった。
急に愛おしくなって、頭を掴んで頬に口付けをしてやったら、一瞬呆けた重に笑いそうになるのを噛み殺しながら俺は寝たふりをする。

あとなんて、知らない。

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テーマ「人外ファンタジー」
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