任務でヘマして、腕を斬った。
けどこんなのは掠り傷だし、放っておけば勝手に治る。そう何度も言っているのに間切はなかなか聞いてはくれない。

「…なぁ間切、これくらい痛くも痒くもないんだけど」
「バカ、化膿したらどうすんだ」
「そんな傷跡だらけの体でよく言うよ」

手当てしてやるから見せろ、だなんて見た目に似合わない言葉で腕を引っ張られ、仕方なく怪我をした部位を見せた。
しかし、とりあえず消毒しようと救急箱を開けたくせに、再び蓋を閉めた。

「…なんで閉めてんだよ」
「お前じゃ、ンなもん効かねぇだろ」
「はぁ?…って、馬鹿、なにっ…!」

さも当たり前のように、間切が怪我をした場所を直接舌で舐めた。その動作がまるで壊れ物を扱うかのように優しくて思わずびくりと体が揺れた。自分が体調を崩したり(滅多にないが)怪我をしたりすると、こうして付きっ切りで看病される。意外と恥ずかしい。断っているのに、勘弁して欲しい。

「っくすぐった…い、よ」

舌がぬるりと腕をなぞって、滲む血を舐め取っていく。血が止まったのを確認し、これまた丁寧に包帯を巻かれた。

「そんな大袈裟な…」
「傷跡残ったら困るだろうが」
「だったらもっと自分の体を気遣えって言ってるだろ」
「そんなに俺が心配か?」

鼻で笑った間切の、腕に触れる唇が、熱い吐息が、私を狂わせる。ああもうムカつく。最近赤くなってばっかりだ。
納得いかない。自分がこんなに恥ずかしい思いをしているのに一人涼しそうにいるのが。
たまにはこっちの身になってみろと、怪我をしていないほうの手で間切の頬に触れた。

「…よく言うよ、これだけ私のそばにいるくせに」

同い年のはずなのに、自分だって鍛えてるはずなのに、一回りも大きい間切の肩に顔を埋める。普段は滅多にしない。
間切の匂いも、この肩も、自分の腕を掴む手も、間切の全部、私のそばにあって当たり前なのだ。

「…どうした」
「君がいなくなったら、誰が私の怪我の手当てするんだよ、まぎり」

顔を間切の胸に擦り寄せて、曝け出されている胸板に軽く唇を押し付けた。
顔を上げると、真っ赤になった間切がこちらを見ていて思わず笑ってしまった。
ざまあみろ、と心の中で呟く。

「…バーカ」
「、ッん、ふ」

なにか危ないスイッチが入ってしまったようだ。上げた顔の顎を掴まれて、唇に噛みつかれた。
軽く開けた口から舌を絡め取られる。熱い。舌を甘噛みされて思わず声が漏れ、気を良くした間切は更に深く私を絡め取ろうとする。
そのまま体重をかけられて私は後ろに倒れて、怪我した腕は掴まれたまま、引っ張られたときに少しだけズキンと痛んだ。

「、…痛いよ」
「さっき平気っつってたくせに、…あー、ったく、…もう何か、いいや」

今度は間切が私の肩に顔を埋める。「お前のこと好きすぎて死にそう」とか、投げやりに呟く間切はかわいい。今回ばかりは私の勝ちだ、そう思ったけど、結局私も毎回間切に甘えているわけで、結果引き分けなのかもしれない。
私は溜め息を吐き、わたしもすきだよ、呟いて、諦めたように間切の首に腕を回した。

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