こんなのは八つ当たりだ。

思い通りにならないから、言って欲しい言葉を言ってくれないから、そんな自分勝手な理由でへそを曲げて、こんなんじゃいくら間切でも
いつか私から離れていくだろう。
それでも私は、求めることをやめられない。もっと、もっととねだるばかりだ。
八つ当たりも愚痴もいじけても、それでも傍にいてくれる間切に私は甘えている。

「ごめん」

唐突に口からこぼれた謝罪に、間切は目を丸くした。

「あ?なんだ?」
「いや…いつも、我が儘ばっかりで、」

私が何を言いたいのか察したようで、間切は笑った。

「…別に、気にしてねぇし、お前はそのままでいい」
「…何でだよ」
「だって、利吉が甘えられるのって世界で俺だけだろ」
「は、」
「我が儘なんて思わねぇよ。可愛いだけ。好きな奴に甘えられて嫌な気持ちになんてなるかよ」

間切の言葉に、今度は私が目を丸くした。

「でも、いつか、嫌になるかもしれないだろう」
「いつか、なんて俺にもわかんねぇよ」

間切が笑っている。
私のわけの分からない八つ当たりも我が儘も、笑ってくれる。なんてバカなんだ。

「…バカだな、君も私も」
「うるせぇ、黙って俺に甘えとけ」
「言ったな」
「は?」
「君に甘えられるのは、世界で私だけにしろよ」

だから私も、間切をどろどろと溶けるように愛してあげるよ。八つ当たりも愚痴も我が儘も、全部ぜんぶ聞かせてやるから、私を抱きしめて笑っていろ。

君にとって私が世界で唯一の、
私にとって君が世界で唯一の、

「とんだ我が儘だな」
「…うるさい、」


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