泥酔してる土井先生はすてきだけど、素敵じゃない。

夜の散歩から帰ってきた土井先生が、何時もより酒臭い。
…、どっか寄ってきたな。
ふらふら歩きながらの一本で、此処まではならない。
家で呑めばいいのに。呑まない私に気を遣ってるのは解るが、独りで家で待ってる私にも気を遣ってほしい。
土井先生は着替えもしないで、ベッドに雪崩れ込んでそのまま爆睡している。
ただ仕事場の彼等みたいなひどい酔い方をしないのは、せめてもの救い。

「笑っても脱いでもいいけど、吐かれるのは流石になぁ…」

ベッドに倒れ込んだまま、動かない土井先生を覗き込む。泥酔はしていたが、穏やかな寝顔をしていた。
泥酔してるときは、穴が開く程見たって気づかれないのがいい。普段だって、別に見たって叱られやしないが、見られ返されて恥ずかしい思いをするだけだから、あまり見れない。
ぐでっ、とした手を握りながら、寝顔を見つめる。
神経の研ぎ澄まされてない、無防備な土井先生の顔をじっと見る。

ただ、な。
泥酔してると、
キスが出来ない。
…出来ないわけじゃないのだが、そのあとが、大変居たたまれなくなる。何度かしたことはあるが、そのあとの記憶は必ず土井先生の腕のなかで先生が私を見ながらニヤニヤ微笑ってるというもの。
微かに残る酒ですら、私を前後不覚にしてるらしい。
(いや、寧ろ、私は土井先生自体に酔ってるのかも知れないんだけど、)
なので学習して以来キスはしていない。
手も握れるし、寄り添えるけど、ただキスだけが足りない。
それがすてきなのに、素敵じゃない。
勿体無い気すらしてくる。


ある日、土井先生に言われた。

「我慢しなくてもいいのに」

耳まで真っ赤になるのがわかって、それから思いきり先生の頬を抓ってやった。






***
(仕事場の彼等=水軍さんたちです)
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -