瞼の重さに耐え切れず、眼を閉じた。
何も見えない。何も無くなる。真っ黒で真っ白。
なのに、手を伸ばされて縋り付いた。
振り払うことも出来たのに。
今までそんなものに触れたことなかったから、温かさに動揺した。
呼吸が浅くなって、重い瞼を上げる。
雷蔵が、私の右手を握っていた。

「……、また、悪い夢でも見たの?」

心配そうに傷がついた私の手を握りながら、雷蔵が尋ねてきた。
あぁ、任務から帰ってきたんだっけ。寝てたのか。
雷蔵は、いつから起きてたのだろう。

「…いや、大丈夫だよ」

呟くが、雷蔵は手を離さない。
私は少し笑って首を傾げた。

「…本当に大丈夫だって、」

指は離れない。

「…、手、」
「離さないよ」

言いかけて、遮られた。

「…いいだろう、このままで。三郎も寝なよ」

あぁ、あのときと同じだ。
もう、こどもではないけれど、熱い体温と細くてもしっかりとした指。
瞼を閉じても、何も見えなくならないし、何も無くならない。私には雷蔵がいるのを知っているから。

「…ん、わかった、よ」

手をぎゅっ、と握り返して、右手の熱に意識をまどろませる。
私は、知ってる。まぶたをあけたら、きみがいる。

だから、私、安心して。

過去の私にそう教えてあげられればよかったのに。



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鉢屋くんは過去に何かあると思います
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テーマ「人外ファンタジー」
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