01

…最近、もやもやする。
理由なんて、ずっと前から、わかっている。


……ネズミが、モテるのだ。

ネズミは友達付き合いがいい。女の子にも優しくて、運動神経は抜群だし、頭の回転も早い。おまけに顔が整っているとくれば、女子達は彼のことを放ってはおかない。
それにネズミは、僕達が暮らす町では有名な劇団にも入っていて、いつもヒロインを演じている。…男なのに。彼は、本物の女性よりも、美しいヒロインを演じた。彼に勝る演技力を持ち、美しい人が、劇団の中にはいなかった。劇団での名前はイヴ。……多分、いや確実に、女性だと思っている人も、いるのではないかと思う程、ネズミが演じるヒロインは美しい。


だから彼は、男女を問わず、モテるのだ。
彼の周りには、いつも人がいた。

彼の周りに人がいることは、仕方ないと言えば仕方ないのだけれど…
なんだか釈然としないというかなんというか…

去年までは、ネズミはいつも僕と一緒に居てくれた。奇跡的にもクラスが一緒か、違っても校舎は一緒だったから、少なくとも休み時間になりさえすれば、話すことができた。

だけど、今年からは高等部になり、僕は特進、彼は普通コースへ進んだ。

中高一貫校だから、建物はかなり大きい。
特進と普通コースは、校舎が違うため、休み時間にばったり会うだとかそういうことは滅多にない。

こうしていざ離れると、僕はどれほどネズミに頼り、依存してきたのかが思い知らされる。

隣にネズミがいない。それだけで、こんなにも毎日がつまらなく、中身のないものだとは思いもしなかった。
…ああ、ネズミと話したい。

「ねぇ、紫苑?………ねぇってば!聞いてるの?」

はっ、とする。隣では沙布が、不服そうな顔をして、頬を膨らませていた。

「な、何の話だっけ?」

「もう!紫苑てば最近そればっかり。」

「ごめんってば。沙布。悪かった。」

…一旦考えるのはやめにしよう。

ぶんぶんと首を振ると、目が回った。



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