「あけましておめでとう」

「あけましておめでとう」


場所は移り、林のなかの開けた場所。木に切り取られた空がぽかりとドーム状に見える場所で、ヨハンとミリアは無事新年を迎えていた。その息は二人とも荒い。


「あ……危なかった……」

「もう……走りながら年明けとか……あり得ない……」


星がよく見える穴場らしい、とヨハンが下調べしておいたこの場所についたのが、最後の除夜の鐘が鳴る数秒前だった。


「ぎりぎり間に合ったんだからセーフだって、セーフ!」

「私が体力ないの分かってるくせにぃ!」

「だから抱っこするって言ったのに」

「嫌だってば恥ずかしい! それ以前にヨハンに誘導されたら着くものも着かないでしょっ」


ふん、とミリアはそっぽを向く。少し待ってから、ちらとヨハンのほうを見やると、叱られた子供のように口をとがらせていた。今日自分がやらかした失態を思い出して何も言えないでいるその姿にミリアが吹き出す。そのまま口もとを押さえつつも、こらえきれないように笑い出す。つられてヨハンも大きな声を出して笑い出した。笑い声は止まない。星がひとつ流れたころにようやく止んだ二つの声は、ひとつに重なり合い、新年を迎えた空気に静かに溶けていった。



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