べしゃり。
そんな音を立てて、砂夜子は雪に覆われたアスファルトへと顔から突っ込んだ。
夕暮れ時、人気の少ない公園の、オレンジに染まった雪に砂夜子の黒髪が散らばる。
「さ、砂夜子ちゃん!? 大丈夫!?」
すぐ隣を歩いていた遊菜は、何事かと目を見開き砂夜子に駆け寄った。
もそりと自力で起き上がった砂夜子の前に立ち、黒い髪やコートについた雪を払い落としてやりながら、とりあえず怪我の有無を確認した。
「大丈夫? 怪我は?」
「……ない。平気だ」
その言葉を聞いて、最後に砂夜子の赤くなった額を擦り遊菜はホッと息を吐き出した。
「どうしたの? 転ぶなんて」
「うむ……雪道がどうも慣れなくて」
「あー。砂夜子ちゃん、暖かい星出身なんだ?」
「まあ、そんなところだ。この星に来て初めて雪を見た」
「へー」
足元の雪をブーツの踵で踏み締めながら言う砂夜子に、遊菜は相づちを打った。
それから砂夜子の手を取り、パッと笑う。
「じゃあ、転ばないように私が手を引いてあげよう!」
「遊菜?」
「ほら、帰ろう! 十代が家で温かい飲み物用意して待ってるよ」
ぐいっと手を引き、遊菜が歩き出した。
釣られて砂夜子も歩き出す。
繋がれた掌から伝わる温もりが心地いい。
砂夜子はクスッと笑って、遊菜の指に自分の指を深く絡めた。
「遊菜」
「うん?」
「あったかいぞ」
「……うん」
遊菜が砂夜子の指を握り返す。
冷えていたふたりの指先は温かくなっていた。
そして顔を寄せ合い笑い合うと、互いの肩をぴったりと寄せて帰路につく。
オレンジ色の夕陽が雪を照らし、キラキラと輝いていた。