昼下がりのアカデミア、防波堤で赤い制服を着た少年が寛いでいた。
少年…遊城十代は両手を空に向かってうんと伸ばす。
「ん〜…、良い天気だなぁ。こんな日に授業なんて出てらんないよな」
短く息を吐いて、今度は両足を投げ出した。
「…ん?船が来てる。」
何気なく船着き場に視線を寄越すと、クルーザーが一艘止まっている。
よく見るとちょうど中から人が降りてくるところだった。
「んー?誰だろ、先生達のお客さんかな?…ふあ〜あ…ねむ…。」
再び欠伸と共に眠気が襲う。
心地よい陽気のと潮風の中で、眠りに落ちた。
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“にーさん…”
“おにーさん”
何やら側で声が聞こえる。
「うーん…誰だよ…」
ゆっくり目を開ける。すると…
『あ、起きた。おはよ、おにーさん』
見知らぬ女性が顔を覗き込んでいた。
「…う、うおおおおおっ!?」
『わわわっ!?な、なに』
「びっくりしたぁ…だ、誰だよあんた」
『ん?ああ、ごめんごめん…ところでさ、いきなりだけどジム・クロコダイル・クックっていうワニ背負ったガイジン知らない?』
「無視かよ…。おう、ジムなら知ってるぜ」
『ホント?良かった〜。あ、じゃあジムんとこまで案内してほしいんだけど』
彼女がにこやかに手を差し出す。
「案内って…。はぁ、わかったよ」
差し出された手を取り立ち上がった。
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「へー、あんたサウス校から来たのか。それでジムと知り合いなワケね」
『うん。ホントはもう卒業しなきゃいけないんだけど、サウス校で単位取りのがしちゃってさー、留年しちゃった。』
「そりゃあ大変だな」
アカデミアの道を二人並んで歩く。
もうすぐ校門を潜るところだ。
『そういえば、君は何年生なの?』
「俺?俺は3年だぜ!それと、“君”じゃなくて十代でいいよ」
『ん、十代ね。じゃあ私のことも…』
「十代!」
声がかかった。
ちょうど向かいから碧色の髪を揺らして少年が駆けてくる。
「ヨハン!」
「よぉ、十代!授業終わったぜ!…って、ええと…君は…」
『おお!うわー綺麗な目と髪〜!お人形さんみたいだねぇ君』
「え?えっと、どうも?」
ヨハンが戸惑い気味に答えた。
『おお〜、アカデミアだ〜、懐かしい〜!』
肝心の彼女はキョロキョロと周りを見回してはしゃいでいる。
「なあ十代、誰だよあのおねーさん」
「あー、なんか留学帰りのキコクシジョ?ってやつみたい。ジムの知り合いらしいぜ」
へー…、ヨハンが頷いた。そのとき…
「やあ!お揃いで何してるんだい。十代くん、ヨハンくん」
「吹雪さん!」
白い制服が眩しい、天上院吹雪が二人に声をかけた。
「今さ、ちょっとジムのお客さんを案内してるところなんだ」
「へぇ、お客さんというのは…」
「ほら、あそこの」
十代が指を指す。
そして吹雪がその先を見て、目を見開いた。
「露樹…?」
『え?…、!!』
名を呼ばれ、振り向いた彼女は、信じられないようなものを見るような顔をした。