数日後、アカデミアの教室で先日のテストの答案用紙が返却された。

クロノスが、1人1人名前を呼び、答案用紙を渡していく。クラスの半分程に答案用紙が行き渡る頃、十代の名前が呼ばれた。

「シニョール十代、答案を取りに来るノーネ」

「……はーい」

元気の無い声で返事をし、十代が席を立った。


『……十代くんって、いつもあんななの?』

とぼとぼと、教壇へ向かう十代の背中を見ながら、露樹が言った。
隣に座る吹雪が頷く。

「そうだねぇ、テストの時はいつもあんな感じだよ。」

『ふーん。まあでも、今回は良い感じだと思うよ』

露樹がしたり顔で吹雪に言う。
吹雪は疑問符を頭上に浮かべ、首を傾げた。

『見てなさいよ。……あ、答案もらったみたい』

教壇では十代がクロノスから答案用紙を受け取っていた。

「うう……やっぱり赤点……?」

「シニョール十代!」

「は、はい!」

恐る恐る十代がクロノスを見る。
クロノスは険しい表情だ。

「……よく頑張ったノーネ!」

クロノスがニッと口角を上げた。

「えっ」

十代が答案用紙を見つめた。視線は点数に注がれる。

「67点……え、うそ」

十代の目が丸くなった。
赤点常習犯の十代にとって、67点というのは中々取れる点数ではなかった。
予想より高い点数に、十代は驚き喜ぶ。
「次のテストも、これ以上に頑張るノーネ」

「はい!」

十代が笑顔で頷いた。
クロノスの期待に満ちた視線を受け、十代が教壇を駆け降り自分の席に戻る。


『ね、言ったでしょ』

「ほんとだ……。」
肩を上げ嬉しそうな十代の後ろ姿を見て、露樹と吹雪が言った。

『今回は、なんたって私が勉強手伝ったんだから!』

「あー……そういえば、こないだ一緒に勉強してたねえ」

『さっすが十代くん、さっすが私! 私の的確な教え方と十代くんの飲み込みの良さのおかげね!』

ふふん、と露樹が胸を張る。吹雪は苦笑いをし、露樹の頭に手を置いた。

「えらいえらい、お疲れ様」

『……バカにしてるでしょ』

露樹が吹雪を睨む。しかし吹雪は気にした様子もなく自分の答案用紙を見つめた。

『もう……。あ、100点……』

吹雪の手の中の答案用紙には満点が付けられていた。露樹が横から覗き込む。
吹雪の腕に頬をぴったりと付けてまじまじと眺めた。

『さ……さすが吹雪、ただのお調子者じゃないんだ。やるじゃん』

「お調子者って……。まあ、頑張ってるよ」

『すごいなぁ、私は何問か落としちゃった』

露樹が自分の答案用紙を見た。
そこには89点と書かれている。溜め息を付ながら、赤いインクで書かれた点数を指でなぞった。

「帰ってきてから初めてのテストなんだ。それだけ取れれば十分じゃないか?」
『ま、そうだネ。次は100点!』

露樹が笑った。それに釣られて吹雪も笑う。
そして露樹は手に持っていた答案用紙を鞄にしまった。


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