カチカチ……

「それでさー、ここの問題だけど……」

カチカチカチカチ……

「僕、この公式……苦手なんだよね」

カチカチカチカチカチカチ……

「……ねえ」

カチカチカチカチカチカチカチカチカチ……

「芯、全部出ちゃうよ?藤原」

カチッ。


その日、吹雪ら特待生の3人は普段と変わりなく授業を受けていた。
午後の授業は酷く退屈だ。教師の言うことの半分以上は、耳をすり抜けていく。
もちろん中には真面目に講義を受けている生徒もおり、そういった生徒たちはひたすら板書を行っていた。

教室の一番後ろの席に、吹雪、藤原、亮は座っていた。
真面目に授業を受けている亮とは裏腹に、隣に座る藤原と吹雪はだらしなく肘をついている。
吹雪に至っては、教師の声など半分しか頭に入れず、だらだらとノートに落書きをしており、その吹雪の隣では、藤原が落ち着き無くペンを弄っていた。
軽い音を立て、忙しなく指先を動かす藤原に吹雪が声を掛ける。

「そんなに気になるなら、行ってくれば?」

「……どこに」

「露樹のところ」

バキッ!

藤原の手に握られたシャープペンの芯が折れた。

「……いいよ別に。すぐ戻ってくるだろ」

教室に……隣にいない露樹に対して、藤原が言った。

「それにしても、心配だねえ。いきなり熱出して寝込むなんて」

昼休み開始のチャイムと同時に、露樹が不調を訴えた。
亮に付き添われ、保健室に行けば発熱していることが分かり、そのまま暫く休むことになったのだ。

「体調管理くらいちゃんとしておくべきだ。」

藤原が言った。
吹雪はにんまりと笑い、藤原の顔を覗き込む。

「とか言ってさ、ほんとは気になるんでしょ?」

「気にならないよ!」

「そうなの?その割りには随分と落ち着きが無いね」

「……う、それはだな」

言葉を詰まらせる藤原の肩を吹雪が叩く。

「先生には僕から言っておくからさ、行ってきなよ」

「…………。」

藤原が吹雪を見つめ、溜め息をついた。そして何も言わずそっと立ち上がる。

「いってらっしゃーい」

吹雪の声に、小さく手を上げて藤原が教室を出ていった。

「最初っから付き添ってればいいのに。ねえ?亮」

「……ん?すまない、聞いていなかった」

「……いや、何でもないよ。」

欠伸を1つ溢し、吹雪は眠る体勢に入った。


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